本研究は、関節リウマチ滑膜細胞においてTGFbeta1で誘導される4つの候補microRNAが、関節リウマチの病態形成を担う滑膜細胞の機能変換をもたらすか否かを解明することを目的として、主に関節リウマチ滑膜細胞を用いた細胞生物学的研究を行うものである。 平成24年度までに獲得したmiRNA導入とその阻害技術、およびTGFbeta1による滑膜細胞の機能変換に関するデータをもとに、平成25年度は候補microRNAの標的分子の同定を試みて、一つの標的分子の同定に至った。この標的分子は関節リウマチ滑膜細胞も産生する分泌タンパク質であり、パラクラインとして滑膜細胞自らにも作用する事が確認された。これにより、TGF、miRNA、標的分泌蛋白発現を経由して、滑膜細胞の機能変換へとつながる経路の一つが判明した。 さらに、この標的分泌蛋白の滑膜細胞に及ぼす効果も検証した。その結果、候補microRNAの標的分泌蛋白により、滑膜細胞が微量ながら恒常的に分泌している骨再生抑制因子の産生が強力に誘導される事が判明した。microRNAは標的分泌蛋白の発現を抑制するため、候補microRNAの滑膜細胞への導入により、滑膜細胞からの標的分泌蛋白と併行して、骨再生抑制因子の産生が抑制されることが示唆された。その臨床的効果として期待される事は、関節リウマチ滑膜細胞の機能変換によって、炎症関節における破壊された骨の再生促進である。
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