日本における高齢化社会の進行は、関節リウマチ(RA)患者数の顕著な増加(増加率約1.5万人/年)としても現れている。このため早期治療法を確立することは喫緊の課題の一つである。現在広く認められ、一般的にも使用される早期診断マーカーとして抗cyclic citrulinated peptide (CCP)抗体がある。抗CCP抗体は、RA特異的にシトルリン化された抗原群に反応性を示す抗体である。PAD4はこのシトルリン化を司るタンパク質で、連携研究者らによりそのタンパク質の立体構造が明らかとされた。構造解析データからCa2+が結合する領域に基質となるアルギニン残基認識部位が存在することが明らかとなった。そこでPAD4を早期RAにおけるターゲットタンパク質の一つと考え、PAD4に対するマウスモノクローナル(MoAb)抗体を作成し、抗体による治療効果を検討した。MoAb作成に関しては、アルギニン残基認識部位周辺に特異的に結合できる様抗体をデザインした。次に作成した抗体の効果検討として、本申請者が開発した関節リウマチモデルマウス(D1CCマウス:(株)オリエンタル酵母工業より販売)を用い予備検討実験を行った。抗PAD4抗体による顕著な治療効果が得られた(特許申請済み)。 本研究では、1)PAD4の機能(in vitro 活性測定)とD1CCマウスを用いたRA発症との関連を明らかにすることを目的とし、生化学的な解析および治療効果検討を行った。2)より特異度、親和度の高いニワトリMoAb抗体を作製し、生化学的な解析を行った。その結果抗PAD4抗体は、in vitro活性測定において強い阻害効果を持つことが明らかとなった。また抗PAD4抗体は、D1CCマウスにおけるRA発症に対し、治療効果を示した。加えて新たなニワトリMoAb抗体作成に成功し、マウスMoAb抗体より強い阻害活性を有することが明らかとなった。これら一連の研究により「RA早期治療法検討の基礎的な道筋」を確立することができた。
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