研究課題/領域番号 |
23591448
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
黒坂 大太郎 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (10277030)
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キーワード | コラーゲン誘導性関節炎 / スニチニブ / 血管新生 / 滑膜炎 / 骨密度 / 炎症性サイトカイン |
研究概要 |
関節リウマチ(RA)は主に関節滑膜の炎症性増殖を主体とする全身性関節炎である.増殖滑膜には豊富な新生血管がみられるため,血管新生阻害療法が奏功する可能性があるが,RAに対する血管新生阻害治療はまだ臨床応用されていない.実用化すれば,難治例への効果や併用療法による相乗効果などが期待される. 腎細胞癌等に対する血管新生阻害薬の一つsunitinib は,内服型のVEGF(vascular endothelial growth factor;血管内皮増殖因子)受容体チロシンキナーゼ阻害薬である.我々はこのsunitinibに着目し,将来的な臨床応用へ発展させるべく,関節炎モデルマウスを用いて,同薬剤の関節炎抑制効果について検討した. まず,ウシII型コラーゲン誘導性関節炎を発症させたマウスにsunitinibの30,60mg/kg/day腹腔投与を行った.そして,コントロール群と投与群間で関節炎点数,発症率,病理学的スコア,骨密度,滑膜の微小血管密度を比較した.また,発症早期と晩期で投与期間を分け,関節炎重症度と発症率の推移を観察した. 結果,Sunitinib投与群においては,コントロール群と比べて,用量依存性に関節炎重症度,発症率,病理学的スコアの低下を認めたが,滑膜微小血管密度については低用量投与群においても著明な低下がみられた.また関節組織中のinterleukin-6やinterleukin-1betaの遺伝子発現も同様に抑制された. suntinibはマウスCIAモデルにおいて関節炎抑制効果を示し,特に滑膜血管新生を顕著に抑えていると考えられた.この化合物のリウマチ関節炎に対する治療薬としての可能性を示した結果となった. この結果は,昨年度の日本リウマチ学会,日本炎症再生学会で発表した.また,Modern Rheumatology誌に掲載が決定した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
sunitinibに関しては,交付申請書に記載した進捗予定の内容については一定の結果を得ており,学会発表や論文化も完了している.sorafenibを用いた実験は,現時点で良好な結果が得られておらず,実験条件等について現在調整中である.
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今後の研究の推進方策 |
sunitinibの関節炎抑制効果の機序について今後更に詳しく検証する予定である.sorafenibに関しては現在実験条件の再調整中である. 関節炎誘導用マウス・ウシII型コラーゲン・アジュバント,ヒト滑膜細胞(健常人由来,関節リウマチ患者由来)・ヒト臍帯血管内皮細胞とその培養液や添加試薬,蛋白発現解析用の抗体・発色系試薬・あるいはELISAキット,RT-PCR・リアルタイムPCR用の試薬(プライマーなど),その他消耗品を主に購入予定としている.
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次年度の研究費の使用計画 |
前述のとおり実験の進捗が遅れており,補助事業期間を一年延長している. 関節炎誘導用マウス・ウシII型コラーゲン・アジュバント,ヒト滑膜細胞(健常人由来,関節リウマチ患者由来)・ヒト臍帯血管内皮細胞とその培養液や添加試薬,蛋白発現解析用の抗体・発色系試薬・あるいはELISAキット,RT-PCR・リアルタイムPCR用の試薬(プライマーなど),その他消耗品を主に購入予定としている.主にsorafenibを使用した実験に役立てる予定である.
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