研究課題/領域番号 |
23591450
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研究機関 | 桐蔭横浜大学 |
研究代表者 |
西村 裕之 桐蔭横浜大学, 医用工学部, 教授 (60189313)
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研究分担者 |
大辻 希樹 桐蔭横浜大学, 医用工学部, 講師 (30398664)
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キーワード | 全身性エリテマトーデス / SLE / Fcgr2b / FcgRIIB / MHC class II / 自己免疫疾患 / NZB mice / NZW mice |
研究概要 |
全身性エリテマトーデス(SLE)では免疫系の自己寛容が破綻し、抗体の親和性成熟をもたらす機序が自己抗体産生において作動する。さらにSLEでは、自己反応性の免疫細胞クローンの異常に帰せられるべき自己抗体産生が、広汎なCD4陽性T細胞レパートリーの自発的活性化と機能異常を背景として起こることが特徴である。申請者はマウスSLEモデルにおいて、B細胞系の寛容破綻とCD4陽性T細胞のポリクローナルな異常が、それぞれFcgr2b遺伝子とMHC class II遺伝子を中核とする異なる多遺伝子支配下にあり、その相互作用がSLE発症をもたらす枢軸的異常シグナル経路を規定している可能性があることを報告した。本研究では免疫系のシグナル伝達に関する先験的情報と、自己免疫応答を基礎づけるcomponent phenotypeを対象とする量的遺伝学の方法により、これらの多遺伝子相互作用がもたらす枢軸的異常シグナル経路の本質を分子論的に明らかにする。平成24年度は、正常マウスで見られる免疫寛容誘導現象、ポリエチレングリコール(PEG)修飾卵白アルブミン(PEG-OVA)による卵白アルブミンに特異的な免疫寛容誘導が全身性自己免疫疾患モデルであるNZB系マウスにおいてみられないこと、正常マウスにおいてはこの免疫寛容誘導能が抑制性Fc受容体であるFcgr2bの発現に依存した現象であること、さらにFcgr2b遺伝子欠損が免疫寛容誘導能の遺伝的欠如として表現されるためには、Fcgr2b遺伝子に密接に連鎖するSLAM遺伝子族の多型が自己免疫疾患感受性を担う系統に由来していることが必要であることを明らかにした。平成25年度は、これらの研究結果を通じて明らかにされた免疫寛容の遺伝的欠損を基礎づけるcomponent phenotypeに着目し、SLE発症を規程する異常シグナル経路の本質を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抑制性Fc受容体遺伝子Fcgr2bの発現は末梢B細胞の自己寛容において重要な役割を果たし、その発現制御は自己免疫疾患感受性において主要な役割を果たしていると考えられる。しかしマウスにおいて免疫寛容誘導能を評価する従来の方法では、免疫寛容原として超遠心精製ウシIgG (DBGG) を用いており、免疫寛容原それ自体がFcドメインを有するので、この実験モデルが末梢トレランスのモデルとして適切であるかについて複雑な議論を避けることができなかった。今回Fcドメインを持たない免疫寛容原(PEG-OVA)を用いた免疫寛容誘導実験においても、NZB系マウスが免疫寛容誘導を示さないことが示され、この寛容誘導モデルを用いて、免疫寛容破綻に関与する遺伝子多型を検索できることが明らかになった。平成25年度は、PEG-OVAを寛容原として誘導される末梢の免疫寛容誘導を量的形質としてとらえ、量的遺伝学の方法を用いて免疫寛容誘導の遺伝的欠如をもたらす多遺伝子支配を明らかにするとともに、SLEモデルマウスのリンパ系細胞に現れる多数の遺伝子の発現異常に着目し、それらの発現異常に着目した連鎖解析を行い、SLE発症をもたらす枢軸的異常シグナル経路を明らかにする。
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今後の研究の推進方策 |
申請者はマウスSLEモデルにおいて、B細胞系の自己寛容破綻とCD4陽性T細胞のポリクローナルな異常が、それぞれFcgr2b遺伝子とMHC class II遺伝子を中核とする異なる多遺伝子支配下にあること、それらの相乗効果がループス腎炎等の重篤な自己免疫病態の表現に必要であることを示した。現在、特にFcgr2b遺伝子異常が自己寛容破綻として表現される機序についての解析が進みつつある。しかしながら、本研究の目的は疾患感受性に関与するポリジーンのひとつひとつを同定するのではなく、ポリジーンの相乗的効果を背景として発生する枢軸的異常シグナル経路についての洞察を得ることを目的とする。平成25年度はそのための研究計画を具体化する。
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次年度の研究費の使用計画 |
SLEモデル(NZB x NZW)F1 マウスを双方の親系NZB系とNZW系に退交配し、雌の退交配マウスの集団を得る。これらのマウスについて、末梢血リンパ球の表現型と自己抗体産生を調べ、自己免疫病態について最高値を示す個体群と最低値を示す個体群を選別し、脾臓リンパ球よりRNAを抽出するとともに、Enzyme ImmunoassayによるIfn-α等の血液中のサイトカイン等の定量、ビーズアレイを用いた末梢血リンパ球についての網羅的遺伝子発現解析を行い、発症群において特異的な遺伝子発現を同定する。さらに、それらの遺伝支配について対交配マウスにおいて明らかにする。以上の研究計画の実施に必要な、モデルマウス系統の購入、合成オリゴヌクレオチド、DNAシーケンサ用消耗品、耐熱性DNAポリメラーゼ等の消耗品が主な研究費の支出対象である。
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