研究概要 |
膠原病の組織リモデリングにおける上皮間葉転換および血管内皮間葉転換の2種の間葉転換の病態への関与、調節機序の解明とその制御による治療創生を目的として研究を行った。 膠原病において間質に顕著な線維芽細胞・血管内皮細胞の増成が認められる組織におけるWntファミリー発現状況を病理学的に検討した。関節リウマチ、強皮症、皮膚筋炎、血管炎症候群に認められる間質性肺炎、肺高血圧症における血管病変の生体および剖検病理試料におけるWntファミリー発現細胞、間葉転換細胞を免疫組織学的染色にて同定し単位面積あたりの発現細胞数、存在範囲、周囲細胞との分布などを解析した。評価においては、組織スライドを3分間で19億画素の高解像度デジタルスライドに変換・記録し、NanoZoomer Digital Pathology (NDP)を用い、標本面積(mm2)に占める間葉転換細胞、Wntファミリー発現細胞の分布などを検討した。間葉系細胞マーカーとしてはαSMを,上皮・血管内皮系細胞マーカーとしてはβ-cateninを用いた。また、上皮間葉、血管内皮転換と密接に関与し、血管リモデリングと閉塞、肺・皮膚硬化に関わるTGFβ発現も検討した。 その結果、上記の膠原病リウマチ性疾患の組織においては、線維化・血管リモデリングの進行を認めている部位に組織にはmyofibroblastの増生が認められた。この組織をWnt10に対する抗体で組織染色したところ、血管内皮に加えてmyofibroblastも染色された。すなわち、これらのWnt10陽性myofibroblastが組織における線維化病態に関与している可能性が示唆された。現在完成したWnt10ノックアウトマウスを用いて実験的間質性肺炎、皮膚硬化に対する同遺伝子の関与の検討を行っている。
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