研究課題/領域番号 |
23591452
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(長崎医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
右田 清志 独立行政法人国立病院機構(長崎医療センター臨床研究センター), 臨床研究センター, 病因解析研究部長 (60264214)
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キーワード | JAKs / STATs / シグナル伝達 / 関節リウマチ / サイトカインレセプター |
研究概要 |
関節リウマチ(RA)滑膜線維芽細胞を、IL-6系サイトカインであるオンコスタチンM(OSM)で刺激し細胞内シグナル伝達を検討した。その結果、OSMの刺激により、RA滑膜細胞のJAK1、2、3の活性化が確認された。この実験系を用い、現在、RAの治療薬として臨床導入が検討されているJAK阻害剤CP690,550とINCB028560の作用を検討した所、両薬剤とも、JAK1、2、3の活性化を阻害するPan JAK阻害薬であり、下流のSTATsの活性化を阻害し、免疫、炎症に関わる遺伝子発現を阻害することが判った。一方JAK3選択的阻害剤であるPF98650はJAK2/STAT3の炎症シグナルには影響せず、STAT3で誘導される炎症分子の遺伝子発現誘導は阻害しないことを明らかにした。 Janus Kinase 3(JAK3)阻害薬は、リンパ球のサイトカインのシグナル伝達を抑制する新規免疫抑制薬として開発された。現在、JAK阻害薬であるCP690, 550(トファシチニブ)は関節リウマチ(RA)に対する治療薬として米国食品医薬品局(FDA)において承認されている。RAに対してすぐれた治療効果が認められるが、血球減少、帯状疱疹を含めたウイルス感染などの副作用に注意が必要である。CP690,550は当初、JAK3選択的阻害薬として開発されたが、JAK1、JAK2に対する阻害作用も有していることが明らかになっている。RA滑膜細胞を用いた検討においても、CP690,550が、JAK3に加え、JAK2/STAT3の炎症シグナルの経路を阻害し、抗炎症にはたらくことが示唆された。また選択的JAK1、2阻害薬もRAに対して奏功することが示唆されており、JAK阻害薬によるRAの治療効果が、JAK3選択的な阻害によるものか、今後の検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各種JAK阻害剤のRA滑膜細胞に対する作用を明らかにした。選択的なJAK3阻害だけでは、RA滑膜細胞の炎症シグナルをブロックできないことを明らかにした。副作用の軽減のためには選択的なキナーゼの阻害が理想であるが、複数のキナーゼの阻害(multi-kinase inhibition)がRAなどの炎症病態の改善に必要であることを明らかにすることができた。以上の内容は、すでに総説に発表すると同時に現在、原著論文「JAK/STAT signaling pathway in rheumatoid synovial fibroblasts」として投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後、siRNAを用い、より選択的に各JAKキナーゼの阻害を試み、RAの炎症病態にどのJAKキナーゼ、STAT分子が必須であるか明らかにしていく。これらの結果をもとに、関節リウマチ(RA)などの慢性炎症性疾患の炎症制御に必要なシグナル伝達の阻害、標的となるシグナル分子を同定し、JAKs/STATs分子を標的とした新しい炎症制御法を開発する。
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次年度の研究費の使用計画 |
siRNAを用いるJAKs、STATs分子の選択的阻害の炎症制御に必要なシグナル分子を同定する。siRNA作成、核酸導入に関する試験、シグナル伝達解析に必要な抗体等の試験の購入に用いる。
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