研究課題/領域番号 |
23591452
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(長崎医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
右田 清志 独立行政法人国立病院機構(長崎医療センター臨床研究センター), 臨床研究センター, 病因解析研究部長 (60264214)
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キーワード | 関節リウマチ / 炎症性サイトカイン / JAKキナーゼ / STAT / JAK阻害剤 |
研究概要 |
JAK阻害剤の関節リウマチ(RA)の治療の有用性を明らかにする目的で、RA由来の炎症滑膜細胞を用いその抗炎症効果を検討した。RA滑膜細胞をIL-6あるいはIL-6系サイトカインであるオンコスタチンMで刺激すると、JAKs/STATs分子が活性化(リン酸化)され、急性期蛋白である血清アミロイドA蛋白(SAA)の遺伝子発現が誘導された。JAK3阻害剤であるトファシチニブ、JAK1,2阻害剤であるバリシチニブは、このIL-6系サイトカインで誘導されるJAKs/STATsの活性化を阻害し、SAA遺伝子発現を抑制することを明らかにした(発表論文1)。またトファシチニブ、バリシチニブは、JAK1,2,3の活性化を阻害することより、Pan-JAK阻害剤であることが示唆された。これらのin vitroでのJAK阻害剤の抗炎症効果を臨床的に検証する目的で、トファシチニブで治療を行ったRA患者の血清を解析した。トファシチニブ投与前、および投与4週後の血清を用いSAAおよびIL-6を測定した所、トファシチニブはSAA、IL-6の濃度を低下させることを明らかにした(発表論文2)。以上の結果より、JAK阻害剤は、RA患者の血清IL-6を低下させることが、抗炎症に働くことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低分子化合物を用いたJAK阻害が、関節リウマチ滑膜細胞のIL-6系サイトカインで誘導されるシグナル伝達をブロックし、様々な炎症メディエータの産生を抑制し、抗炎症に働くことを明らかにした。これらの研究成果は、Journal of Rheumatology, Arthritis Research and Therapyなどのリウマチに関する国際ジャーナルに原著論文として発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
関節リウマチ患者由来の生体試料を用いJAK/STATシグナル伝達ブロックが、抗炎症につながることをIn vitroの実験系で明らかにした。今後は、これら研究結果が、実際の臨床現場で確認できるか明らかにする。すでにJAK阻害剤は、抗リウマチ剤として日本で承認された。JAK阻害剤の投与をうけている患者の血清を用い、JAK阻害剤が各種炎症性サイトカインにどのように影響するか明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究成果が予想より早く得られ、これら結果の論文化にエフォートを追加したため、研究費の残額が生じた。今後、in vitroの実験で得られた知見が、in vivoの生体の現象を反映しているか、臨床検体を用い検証する。具体的には、JAK阻害剤投与前後での血清サイトカインの変化をELISA、ELIS potで測定し、JAK阻害剤の抗リウマチ効果と血清炎症性サイトカインとの関係を明らかにする。 トファシチニブ投与前後で、RA患者血清を用い、ELISA法で、IL-6、SAA測定しその変化を明らかにする。さらにELIS potを用い炎症性サイトカインを包括的に測定し、トシリズマブで治療前後で、変動するサイトカインを明らかにする。同時にRAの測動性示標(DAS28)も同時に測定し、RA測動性示標と相関のある炎症性サイトカインを明らかにする。最終的にはJAK阻害剤の治療標的となっているサイトカインを臨床検体を用い明らかにする。
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