研究実績の概要 |
目的:関節リウマチ(RA)に対するJAK/STATシグナルを阻害する分子標的療法の有用性に関してRA患者より分離した滑膜細胞を用い解析を行った。 研究方法:インフォームドコンセントの得られたRA患者より人工関節置換術の際、採取された関節滑膜より樹立した滑膜細胞を用いて検討を行った。これらRA滑膜細胞を炎症性サイトカインであるオンコスタチンM(OSM)、IL-6(可溶性IL-6R存在下)で刺激した。シグナル伝達は、サイトカイン刺激後、滑膜細胞を溶解し、その溶解物を、抗リン酸化JAK1,2,3, およびSTAT1,3,5 抗体を用いたイムノブロットで解析した。SAA1,2のmRNAの発現は、RT-PCRで検討した。 研究結果:RA滑膜細胞をOSMで刺激すると、JAK1、2、3のリン酸化、およびその下流のSTAT1、3、5のリン酸化が確認された。トファシチニブ(~0.5μM)で前処置すると、OSMによるJAK1,2,3 およびSTAT1,3,5のリン酸化は阻害された。以上の結果によりトファシチニブは当初考えられていたJAK3選択的阻害剤ではなくJAK1,2も阻害することが判った。さらにトファシチニブはこのIL-6による炎症シグナルに影響するか、RA滑膜細胞を用い検討した。RA滑膜細胞をIL-6で刺激を行うと、JAK2、STAT3のリン酸化が誘導され、SAA1,2のmRNA発現が誘導された。このIL-6刺激によるJAK2/STAT3のSAA1,2のmRNA発現をトファシチニブは抑制した。 結論:低分子化合物であるトファシチニブは、JAK3のみならずJAK2を阻害することで、その下流のSTAT3を介した炎症シグナルをブロックし、抗炎症に働くことが示唆された。
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