研究概要 |
2001年に我々が発見したサイトカインIL-17F(Kawaguchi et al. J. Immunol. 2001)は喘息患者の気道で高発現しており、様々なサイトカインの産生を誘導することから喘息の治療戦略上重要な標的の一つと考えられている。しかしながら、その誘導因子は不明であった。種々の検討の結果、2005年に発見された新規サイトカインであり、アレルギー性気道炎症を強力に誘導するIL-33がその誘導因子であることを発見した。本研究ではIn vitroの実験系でIL-33によるIL-17Fの発現とそのメカニズムを解析する。さらに喘息患者の臨床検体を用いてIL-17Fを定量し、喘息の診断、重症度や治療効果との相関を解析し、有用な臨床的マーカーになり得るか検討する。本年度は以下を明らかにした。 1.IL-33によるIL-17Fの発現:免疫染色の結果から気道上皮細胞が重要なIL-17Fの産生細胞であることが判明した。気道上皮細胞(ヒト正常気道上皮細胞ならびにセルラインBEAS-2B細胞)をIL-33(10, 100, 200ng/mL)で刺激するとIL-17Fの発現を有意に遺伝子レベルおよびタンパクレベルで認めた。 2.IL-33のシグナル伝達経路:IL-33によるIL-17Fの発現はIL-33の受容体ST2を介してその下流ではERK1/2-MSK1を介することが判明した。また、他のMAPキナーゼであるp38MAPK, JNKの関与は認めなかった。 以上から喘息の病態にIL-33/IL-17Fの関与が示唆され、新たな喘息の病態が解明され、臨床応用への可能性が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の「1.IL-33によるIL-17Fの発現」および「2.IL-33のシグナル伝達経路」に関しては国際誌であるAllergyに採択された(Fujita J, Kawaguchi M, Kokubu F, Ohara G, Ota K, Huang SK, Morishima Y, Ishii Y, Satoh H, Sakamoto T, Hizawa N. Interleukin-33 induces interleukin-17F in bronchial epithelial cells. Allergy. 2012 Jun;67(6):744-50.)。また、研究内容は日本呼吸器学会学術講演会、米国胸部疾患学会等で発表した。
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