研究課題/領域番号 |
23591456
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
石塚 全 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50302477)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | プロトン / 気管支平滑筋 / 気道リモデリング / 気管支喘息 / CTGF / IL-8 |
研究概要 |
正常ヒト気管支平滑筋細胞(BSMC)を培養し、プロトン刺激によるConnective tissue growth factor(CTGF)に関する検討を行った。Real time PCR法を用いて検討した結果BSMCに発現しているプロトン感知性受容体はOvarian cancer G-protein-coupled receptor 1 (OGR1)が主であった。pH 6.3 および pH 7.4の培養液でBSMCを培養すると、pH 6.3で培養したときに 8時間以降でCTGFの有意な産生が確認された。CTGF産生はpHに係らずTGF-beta1刺激によって惹起されたが、細胞外pH 7.4 の場合に比べてpH 6.3の場合に強く増強された。蛋白レベルでの産生に加えて、CTGF mRNA発現が細胞外pH 6.3による誘導されることも確認した。OGR1に特異的なsiRNAを用いて、BSMCのOGR1発現を選択的に抑制すると、細胞外酸性によるCTGFのmRNA発現、蛋白の産生は阻害された。したがって、細胞外酸性によるBSMCのCTGF産生はOGR1を介する刺激によって惹起されることが明らかになった。OGR1を介する細胞外プロトン刺激によるCTGF産生の細胞内メカニズムを検討する目的でGq阻害薬とイノシトール三リン酸受容体拮抗薬で前処理後、細胞外酸性によりCTGF産生を惹起するといずれの前処置によってもCTGF mRNA発現、CTGFの産生が有意に抑制された。また、すでに報告したIL-6と同様、この細胞では細胞外酸性によりCTGFを産生し、そのメカニズムとしてOGR1を介する細胞内Caの増加が関与していることが示唆された。気管支平滑筋は細胞外酸性により細胞内Caが増加し、収縮すると同時にリモデリングや気道炎症を惹起する物質を産生しているものと思われる
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト気管支平滑筋細胞が細胞外プロトンをプロトン感知性受容体OGR1を介して産生することを実験的に証明し、気道リモデリングに重要な因子とされるTGF-beta刺激による気管支平滑筋からのCTGF産生もプロトンが増強することを確かめた。気管支喘息の重症化、難治化を考える上で気道リモデリングの形成は重要であるが、細胞外プロトンが細胞内Caを増加させ気管支平滑筋の収縮と同時に気道リモデリングを促進するCTGFを産生させることを示唆する結果を得て、この成果を論文として発表することができたので、現在までの研究の達成度はおおむね順調であると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
OGR1ノックアウトマウスを用いて卵白アルブミン感作によるアレルギー性気管支喘息モデルを作成し、野生型マウスと比較する。また、ブレオマシン持続皮下注射によるマウス肺線維症モデル作成の予備実験が終了し準備が整ったので、喘息モデルと同様、肺線維症モデルにおけるOGR1の関与を検討していく。また、ヒト気管支平滑筋細胞からプロトン刺激によるIL-8産生をCTGF同様に確認したので、IL-8産生の細胞内メカニズムを詳細に検討する。すでに報告したIL-6やCTGF同様、ヒト気管支平滑筋細胞はGq、ホスホリパーゼC、イノシトール三リン酸、細胞内カルシウムの動員を介してIL-8を産生誘導すると予想される。また、IL-8産生にはMAP kinase (ERK)の活性化やNFkBの活性化も関与も示唆されるが、OGR1を介するCa依存性細胞内シグナル伝達経路とERK、NFkBとの細胞内シグナル伝達のクロストークについて研究を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度はOGR1を介するプロトン刺激によるヒト気管支平滑筋細胞からのIL-8産生の細胞内メカニズムを解明するために、ヒト気管支平滑筋培養に必要な培養液、培養液に添加する各種増殖因子、胎仔血清、IL-8測定に必要なELISAキット、IL-8 mRNAの発現を検討するためのreal time PCR用試薬を購入する。さらに細胞内シグナル伝達の検討のために使用する各種阻害薬、ERKのリン酸化を解析するためのWestern blot用試薬などの消耗品、喘息モデル、肺線維症モデルの実験に使用するマウスの購入に研究費を使用する。国内学会での発表用の旅費にも研究費を使用する予定である。
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