研究課題/領域番号 |
23591456
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
石塚 全 福井大学, 医学部, 教授 (50302477)
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キーワード | 気管支平滑筋細胞 / プロトン / OGR1 / IL-8 / カルシウム / ERK / Gq / TNF |
研究概要 |
正常ヒト気管支平滑筋細胞(BSMC)を培養し、プロトン刺激によるIL-8産生を確認し、その産生メカニズムを細胞内シグナル伝達因子を中心に検討した。pH6.3およびpH7.4に調整した培養液(D-MEM)でBSMCを3、6、12、18、24時間培養すると、PH6.3で培養したBSMCでは3時間以降で経時的に増加するIL-8の産生が蛋白レベルで確認された。IL-8 mRNAの発現もpH6.3ではpH7.4と比較して6時間後に有意に多く誘導された。BSMCに発現するプロトン感知性受容体OGR1をsiRNAを用いて減少させると細胞外酸性によって誘導されるIL-8産生は有意に抑制されたため、細胞外酸性によるBSMCからのIL-8産生はOGR1を介するプロトン刺激によるものと考えられた。プロトン刺激によるIL-8産生に関与する細胞内シグナル伝達因子を解析するため、Gq阻害薬、イシトール3リン酸(IP3)阻害薬、MEK阻害薬のプロトン刺激によるIL-8産生への効果を検討したところいずれの前処置もIL-8産生を抑制した。細胞外酸性はBSMCの細胞内Ca濃度の増加を惹起することも確認した。したがってOGR1、Gq、細胞内Caの増加とMEK、ERK1/2活性化がIL-8産生には必須であることがわかったが、PKC阻害薬、カルシニューリン阻害薬、カルモデュリンキナーゼII阻害薬のいずれもIL-8産生を抑制しなかったため、細胞内Ca増加がどのような機序でIL-8産生につながるのか現時点では不明である。プロトン刺激の対照としてTNF刺激によるBSMCからのIL-8産生に対してはNFkB阻害薬の前処置は抑制したが、Gq阻害薬、IP3阻害薬、MEK阻害薬のいずれも抑制しなかった。プロトン刺激によるIL-8産生もNFkB阻害薬によって抑制された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロトン刺激によるOGR1を介するIL-8産生に関与する細胞内シグナル伝達因子の解析を進め、研究実績の概要に記載したいくつかの新知見を得ることができたので、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年12月に研究代表者の所属する研究機関が変更になったので、福井大学で今までの研究を継続するための機器、試薬などを準備中である。気管支平滑筋細胞(BSMC)のプロトン刺激によるIL-8産生に関する細胞内シグナル伝達因子の解析を進める。特にOGR1を介する細胞内Ca増加とERK活性化との関係、プロトン刺激によるNFkB活性化の有無、細胞内Ca増加と転写因子との関連について解析を進める。また、ヒト気道上皮細胞を用いて、プロトン刺激によって変化するmRNA発現を網羅的に検討する。さらに、ヒト気道上皮細胞およびBEAS-2B細胞株を用いて、プロトン刺激によって誘導される因子のmRNA発現、蛋白発現へのプロトン感知性受容体OGR1の関与をOGR1のsiRNAによりOGR1の発現を低下させた細胞で解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は引き続きOGR1を介するプロトン刺激によるヒト気管支平滑筋細胞からのIL-8産生に関与する細胞内シグナル伝達因子を解明するために、ヒト気管支平滑筋細胞、細胞培養液、ELISAキット、real time PCR用試薬を購入する。また、気道上皮細胞のプロトン刺激によるmRNA発現を網羅的に解析するため、ヒト気道上皮細胞、細胞培養液、mRNA抽出用試薬などの購入に研究費を充てる。
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