研究課題/領域番号 |
23591459
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
本田 善一郎 お茶の水女子大学, 保健管理センター, 教授 (70238814)
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研究分担者 |
本田 浩章 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (40245064)
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キーワード | Fc受容体 / 膜貫通部位 / 遺伝子多型 / タンパク質間結合 / 治療標的 |
研究概要 |
抑制型FcγRIIB受容体の膜貫通部多型I232Tは自己免疫の発症リスクに関連すると共にマラリア感染抵抗性を付与することが判明し、ヒト個体の免疫閾値を低下させる重要な変異である。さらに同多型は、Fc受容体が細胞膜を越えてどのようにシグナルを発生させるか、という根源的な問題にアプローチする上での原型的なモデルとして解析する価値がある事を我々は提示している。すでにI232Tが受容体の脂質ラフトへの分配を減少させ、そのB細胞機能抑制能が減弱する、無機能型変異体であることを示した。本論文は広く注目され重要なレビューを含め100回に上る引用を受ける重用な情報となっている。FcγRIIBはホモロジーが極めて高い活性型受容体、FcγRIIAをペア型受容体として有し、本研究では活性型、抑制型受容体双方を研究対象とした。平成24年度までにFRET法、システインスキャニング法を用いFcγRIIA細胞膜外膜近傍部分、膜貫通部位外膜側、膜貫通部位内膜側の3ヶ所に重要な会合モチーフを見出した。これらは共通の膜会合モチーフを内在しており、この内膜貫通部位の接点はいずれもリガンド依存性に会合しシグナル発生に必須である。個々の接点に無機能型の変異を導入する実験から、膜貫通部の接点は独立に働き膜内で受容体3量体を形成してシグナルに関わることを見出した(論文登校準備中)。FcγRIIBも同一のモチーフを介して会合し、I232T変異は会合状態を大きく変化させる。膜内での密接な多量体形成は受容体ラフト分布、シグナル発生の構造単位を与える可能性がある。また、いくつかのシード薬剤が膜貫通部接合を低下させてシグナルを抑制する可能性を見出しており、治療的な側面からの検討を加える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は初めてFcγRIIA、IIBの細胞膜外膜近傍部分、膜貫通部位外膜側、膜貫通部位内膜側の3ヶ所に重要な会合モチーフを見出した。I232T変異はFcγRIIBの会合状態を大きく変化させる。I232T変異が免疫調節の異常をきたす分子機構は多くの研究者に注目されており、その問に明快な解答を与えることができる。また、シグナル発生と膜貫通部位機能の関係は理解されておらず、今回の知見は受容体機能の基礎的理解にとって大きな進展となると考えられる。また、シード薬剤が膜貫通部接合を低下させてシグナルを抑制する可能性があり治療剤開発上も有用な情報を提供できると考えている。以上、この2年間で目的達成に近づく成果が十分達成されている。
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今後の研究の推進方策 |
FcγRIIA、Bの会合モチーフは多くの抑制型受容体の膜貫通部位に見出され、免疫閾値をコントロールする重用なモチーフである可能性がある。現在、このモチーフの意義の普遍性を多くの受容体で検討中であり、今後もその作業を進めていく。また、活性化受容体、抑制受容体を問わず膜内での密接なホモ、ヘテロ多量体形成は受容体ラフト分布、シグナル発生の構造単位を与える可能性があり、検討を加える。さらにいくつかのシード薬剤が膜貫通部接合を低下させてシグナルを抑制する可能性を見出しており、治療的な側面からのモデル実験を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続き多くの系統的、発展的な遺伝子変異導入と機能解析、多量体形成解析を行い、理論の検証、普遍性の検討を行なっていく。多くの治療薬剤シードを実験系に導入し、新たな作用機序を持つ薬剤のスクリーニングを行なう。そのために、研究費の使途としては分子生物学的試薬、培養器部試薬、生化学的試薬、抗体類が中心となる。また、薬剤シードが膜脂質に作用して受容体会合を変える可能性を見出しており、脂質分析のカラム、薄層クロマトグラフィー、溶媒、アイソトープを購入する。
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