研究課題
自己免疫疾患、生活習慣病、などにおける慢性炎症の重要性が指摘され、新規の標的分子を検索する意義がある。我々は全身性エリテマトーデスに関連するFc受容体多型のを解析し膜貫通部位(TMD)のアミノ酸置換が受容体機能を大幅に減弱させることを見出した。この知見はTMDが積極的に関与する未知のシグナルを示す。我々はこの、細胞膜シグナル伝達の分子機構を検討した。同機構は創薬標的として重要なフィールドを形成する。多型を見出したFcgRIIB(抑制型)、対(pair)をなすFcgRIIA(活性型)を対象としキナーゼ型受容体の研究から示唆されたTMD部位特異的会合を検討した。手法は、膜周辺貫通部のアミノ酸をCys置換し、作成した28種類の置換体をヒトB細胞株に安定発現して銅錯体による酸化刺激を、あるいは膜内還元状況下ではCys選択的クロスリンカ-を用いて、二量体・多量体を検出するものである。従来、膜貫通部位ペプチドを可溶化剤内で再構成し、核磁気共鳴法によって二量体構造を決定する手法が行われ成果をあげていたが、この方法は分子全体を取り扱うことができず、リガンド刺激時の挙動を知ることができない。Cysクロスリンクを用いる手法では分子全体を扱いリガンド刺激を加える事ができる。諸種の条件設定、詳細な分析を終え、以下の新たな知見を見出し、投稿準備中である。1)FcgRIIは非刺激時にTMD細胞外部分で非活性型二量体を形成する。2)刺激時には2ヶ所のTMD会合面(GxxxGモチーフ)を介して二量体、三量体を形成する。3)最大刺激は三量体によって伝達される。従来Fc受容体は多価架橋で刺激を受けることが知られていたが、TMD三量体形成がその分子機構である可能性が高い。4)疾患関連多型では刺激依存性会合部位の会合状況が大きく変わっている。これらの知見は受容体シグナル伝達の基礎となり、同時に創薬標的部位を示す。
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PLoS One
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FEBS Lett.
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