研究課題/領域番号 |
23591460
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
川野 充弘 金沢大学, 大学病院, 講師 (20361983)
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研究分担者 |
山田 和徳 金沢大学, 大学病院, 助教 (90397224)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | IgG4関連疾患 / モデルマウス |
研究概要 |
IgG4 関連疾患は、原因不明の慢性炎症性疾患である。病変は多臓器に及び、傷害組織においてTh2優位のサイトカイン産生が行われている。これまでTh2優位の免疫反応を有する適切なモデル動物が存在せず、発症機序の解析および治療法の確立が困難であった。申請者らはTh2 優位の免疫反応とリンパ増殖性 疾患を起こすLATY136F 変異マウスが、IgG4 関連疾患の動物モデルとなり得るかを検討した。 本年度は、6、8、10、12、16、20 週の各週例のLAT Y136F変異マウスおよび野生型マウスについて、膵臓、唾液腺、腎臓の各組織について、病理学的に検討し、炎症および線維化の評価を行った。また、4-5週齢および7-8週齢のLAT Y136F変異マウスおよび野生型マウスにプレドニゾロンを腹腔内に投与し、ステロイド反応性について評価した。 LATY136F 変異マウスは,膵臓、唾液腺、腎臓の各組織において、区域性の炎症細胞浸潤および線維化を認めた。浸潤細胞は主として、IgG、IgG1陽性細胞であった。ステロイド投与群は生食投与群と比較して、病変は軽度であり、ステロイド反応性を認めた。 これらの結果より、LATY136F 変異マウスは、Th2優位の免疫反応、血清IgG1高値、局所へのIgG1陽性細胞浸潤および線維化形成、ステロイド反応性の特徴を備えており、IgG4関連疾患の新規モデルマウスと考えられた。 本年度の研究により、LATY136F 変異マウスは、Th2優位の免疫反応を有するIgG4関連疾患モデルマウスであることが確認された。今後は、本モデルマウスを用いIgG4関連疾患の病因の解明および治療法確立を行う予定であるが、本年度の研究はその土台が得られた点で意義のある結果であったと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究における、本年度の達成目標としては、LAT Y136F変異マウスがIgG4関連疾患のモデル動物としての特徴を備えているかどうかの検討を行うことであった。申請者らは、LAT Y136F変異マウスの病理学的検討およびステロイド反応性の評価を行い、LAT Y136F変異マウスが、IgG4関連疾患のモデルマウスとしての特徴を備え、モデルマウスとなり得ることを確認できたため、本年度の目標を達成することができたと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度以降は、前年度に行ったLAT 136F変異マウスの病理学的、免疫学的検討をさらに進める。LAT Y136F変異マウスにおいて、少なくとも6週目より炎症細胞浸潤、線維化を認めることを確認したが、今年度は引き続き上記検討を続け、検体数を増やすことにより、臓器重量や線維化スコアについて統計学的解析を行う。また、ステロイドの腹腔内投与により病変の改善が確認されたが、今年度は投与量や投与回数を変化させ、ステロイド反応性についてより詳細に評価する。具体的には、ステロイド前後でのTh1およびTh2サイトカインの測定や浸潤細胞の免疫組織学的検討を行う予定である。さらに、平成24 年度は以下の点について検討し、発症因子としての結核の関与やヒトにおけるLAT 遺伝子の変異など、IgG4 関連疾患の発症要因の解明を目指す。(1)発症要因としての結核の関与についての検討申請者らは、IgG4 関連疾患患者において、結核感染の有用な検査であるクオンティフェロン陽性者が多いことを見いだし、結核菌に対するアレルギーが発症原因の一つと推測している。そこで、本モデルマウスに結核死菌を腹腔内に投与し、週齢ごとの各臓器の病理学的検討を行い、IgG4関連疾患と慢性抗原刺激との関連を検討する。(2)ヒトIgG4関連疾患患者における、LAT遺伝子の解析 ヒトIgG4 関連疾患患者の原因にLAT が関与するシグナル伝達異常、T 細胞発達異常が関与している可能性が推測される。そこで、IgG4 関連疾患患者におけるLAT 遺伝子及びその他のTCR-MHC ペプチド複合体結合に関与する蛋白(ZAP-70, Grb2, PLC-γ, SLP-76, Vav)について、遺伝子変異および末梢血T 細胞での発現量の検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度予定していた各臓器におけるTh1およびTh2サイトカインの検討および免疫染色は次年度に行う予定としたため、それに伴う費用は次年度に繰り越しとした。 次年度は、LAT Y136F 変異マウスの系統維持および実験用のマウスの飼育のため、常時24ゲージ以上飼育している。その飼育費用として、500千円を予定している。免疫染色、組織染色用試薬として、250千円を予定している。また、結核抗原、PCR、シークエンスなどの試薬の購入費として、250千円を予定している。また、今年度は当初は海外出張を予定していなかったが、共同研究者であるジュネーブ大学の出井教授との研究の打ち合わせおよびEULAR(ヨーロッパリウマチ学会)への参加を予定しており、旅費として400千円を予定している。
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