研究課題/領域番号 |
23591460
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
川野 充弘 金沢大学, 大学病院, 講師 (20361983)
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研究分担者 |
山田 和徳 金沢大学, 大学病院, 助教 (90397224)
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キーワード | IgG4関連疾患 / Th2 / モデルマウス / APRIL |
研究概要 |
前年度、申請者らはLATY136F変異マウスが、IgG4関連疾患の新規モデルマウスであることを明らかにした。 本年度は、膵臓、唾液腺、腎臓についてさらに詳細に組織学的検討を行った。LATY136F変異マウスは4週齢では、上記臓器においてほとんど病変を認めないことを明らかにした。すなわち、ステロイドをはじめとする薬剤投与実験において、4週齢からの投与が望ましいと考えられた。 当初、本年度は結核死菌の腹腔内投与を予定していた。しかしながら、申請者らはヒトのIgG4関連腎臓病において、形質細胞の生存シグナルのひとつである、a proliferation inducing ligand (APRIL)の発現を認め、ステロイド治療により発現の低下を認めることを明らかにし、アメリカ腎臓学会に報告した(ASN 2012、サンディエゴ)。この臨床研究より、IgG4関連疾患におけるAPRILの関与について、解明することが急務であると考えられたため、予定を変更してLATY136F変異マウスを用いてAPRILの病態への関与について検討した。具体的には、LATY136F変異マウスに4週齢よりAPRIL阻止抗体またはコントロールIgGを投与、7週齢で組織を検討した。その結果、APRIL阻止抗体投与群では、コントロールと比較して病変が軽度であった。この実験結果は、APRILがIgG4関連疾患の病態に深く関与していることを示しており、臨床研究の結果を指示するものであった。 本年度の研究により、APRILがIgG4関連疾患の病態に深く関与しているという新たな知見が得られた。当初の予定とは異なっているが、IgG4関連疾患の病態の一つに関して、臨床データと基礎研究の両者により明らかに出来た点より、意義があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LAT Y136F変異マウスの病理学的検討を昨年度よりさらに詳細に行うことができた。結核の関与に関する検討はまだ施行出来ていないが、新たにIgG4関連疾患におけるAPRILの関与について明らかにすることができ、新たな知見が得られたため、おおむね順調に進展している考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、本年度に明らかにしたIgG4関連疾患におけるAPRILの関与についてLAT Y136F変異マウスを用いて、さらに詳細に検討を行う。具体的には、APRIL投与後の血清サイトカイン、病変への浸潤細胞の種類、病変局所でのサイトカイン、ケモカインの発現などについて、検討する。さらに、APRILの上流に位置する分子について明らかにする。 また、本年度施行できなかった、結核死菌の腹腔内投与実験およびヒトのLAT遺伝子の遺伝子解析について、平成25年度に行う。これらの研究により、LAT Y136F変異マウスおよびヒトの検体を用いて、IgG4関連疾患の病態形成に関与する因子について明らかにしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
LAT Y136F 変異マウスの系統維持および実験用のマウスの飼育のため、常時50匹以上飼育している。その飼育費用として、250千円を予定している。遺伝子抽出用キットおよびフローサイトメトリー用抗体および試薬として、それぞれ50千円、200千円を予定している。また、当該年度に論文発表を予定しているが、英文検閲代として、50千円、別刷り代として100千円を予定している。また、学会での研究成果発表の為、国内および外国旅費として、それぞれ100千円、250千円を予定している。 平成24年度は23,196円の未使用額が発生した。当該年度に使用予定の結核死菌の腹腔内投与実験を次年度に行うことにしたため、それに伴う費用は次年度に繰り越すことにした。
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