研究課題/領域番号 |
23591461
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
中川 竜介 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (10360603)
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キーワード | 食物アレルギー / 腸管粘膜 / サイトカイン |
研究概要 |
IL-23,、およびIL-17 knockout(KO)マウスではcholeratoxinと抗原タンパク質であるovalbumin(OVA)感作によって血清中のOVA特異的immunoglobulin(Ig)EとIgG1の濃度はwildtype(WT)マウスに比べて顕著に高くなる。また、OVA投与によって、IL-23 KOマウスの穴フィラキシーショックの症状は、WTマウスよりも悪化する一方、IL-17 KOマウスの症状は軽くなる。 IL-17 KOマウスの骨髄細胞からIL-3添加培養して調製した、肥満細胞の抗原感作による脱顆粒がWTより低下していることがわかり、このことがショック症状を緩和している原因となっていると考えられた。また、IL-17 KOマウスでは受動的アナフィラキシーショックの症状もWTに比べて軽快であることから、IL-17は肥満細胞の脱顆粒増強に重要であることがわかった。IL-17が肥満細胞において、どのような影響を与えているのか解明するため、現在、遺伝子発現パターン等の解析を行っている。 常在細菌をいっさい持たない、無菌マウスでは食物アレルギーによる血清中IgEとIgG1の濃度が通常環境下で飼育したconventional(conv)マウスに比べて著しく高く、抗原投与によるアナフィラキシーショックの症状も劇的に増悪している。無菌マウスではIL-23 /IL-17の腸管粘膜における免疫細胞からの生産が明らかに低下している一方、Th2サイトカイン生産量および、lineage- /c-Kit+細胞数が多い。 これらの結果から、食物アレルギーに感受性が高くなる原因としてIL-23 /IL-17によるTh2サイトカイン調節機構が不十分であることがあげられ、今後、腸管粘膜においてIL-23 /IL-17誘導によって食物アレルギー抑制する因子の探索を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
IL-17欠損によって、食物アレルギー感作による、血清中の抗原特異的IgEとIgG1は上昇するものの、抗原投与で発症するアナフィラキシーショックはIL-17 KOマウスで明らかに症状が軽快となる。また、リコンビナントIL-17、およびIL-23の投与はアナフィラキシーショックの症状を増悪することから、全身性投与は治療法とはなり得ないことも判明した。これらの結果は、単純にIL-23 /IL-17発現を全身性で高めることではアレルギー感受性を抑制する治療法にならないことを示唆しており、腸管局所に限定してIL-23 /IL-17を高める方法を考案している。 現在、腸管粘膜においてIL-23 /IL-17発現を高める方法として、天然物由来arylhydrocarbon receptor(AhR)アゴニストやvuramin A, D誘導体接種による食物アレルギー治療法を開発中である。また、肥満細胞がIL-17によってどのようにして脱顆粒が増強するのか、遺伝子発現パターンの解析等からその機序解明研究を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
1、AhRアゴニスト、およびvitamin A, D誘導体接種による食物アレルギー発症抑制効果を評価している。これまで、in vitro試験で、naive T細胞に対してIL-17生産を増強することを確認した低分子候補物質をin vivo試験で、IL-17生産増強および食物アレルギー発症抑制効果があるかを判定する。 2、IL-17は肥満細胞の抗原抗体複合体刺激による脱顆粒を増強することがわかっている一方で、好塩基球の分化を抑制することも判明した。食物アレルギーによるアナフィラキシーショックは肥満細胞を欠損しても発症すること、およびIgG1と好塩基球もアナフィラキシーショックに関与することから、好塩基球をの機能を制御することも症状の緩和には必要であることが考えられる。よって、IL-17が肥満細胞、および好塩基球活性化においてどのような影響を与えるのか、細胞分化を含めて検討している。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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