研究課題
TNFは多彩な生物活性を有する代表的なサイトカインである。関節リウマチをはじめとして様々な慢性炎症性疾患の病態に大きく関与している。TNFの産生、細胞内の輸送、細胞膜を通して細胞外へと分泌するという一連のメカニズムを解明することは、炎症性疾患の制御に大きく寄与すると考えられる。本研究ではTNFの細胞内での一連の輸送機構を明らかにすることを目的としている。マウスではSNAREファミリー分子の関与が報告されているがヒトでの報告はない。我々は、研究期間3年のうち最初の2年間において、研究の基盤となる実験系を確立した。すなわちTNFを安定して発現するヒト細胞株(TNF発現JurkatT細胞、HeLa細胞、HEK293T細胞)を樹立することに成功した。そしてまずT細胞系であるJurkatT細胞を用いて網羅的にSNAREファミリー分子をRNAi法によってKO(knock out)した。その結果、STX4、STX6、VAMP3をKOしたときに最大50%のTNF分泌低下を認めた。これら分子のKOによってJurkatT細胞内のTNFタンパク量すなわちTNF産生自体には影響がなかった。最終年度の3年目には、この事象がほかの細胞でも普遍的に見られる現象であるかを検討した。扁平上皮系のHeLa細胞、腎細胞由来HEK293T細胞を用いてSTX4、STX6、VAMP3をKOしたときに同様の現象が認められるかを解析した。JurkatT細胞ほど顕著な相違は認めなかったがこれら分子で抑制される傾向を認めた。一方、TNFを恒常的に産生するベクターを導入していないヒト培養細胞でもこれらSNARE分子のKOを行った。その結果、STX4をKOした場合に最も強力にTNF分泌が抑制された。以上の検討より、ヒトにおいてもSNAREファミリー分子がTNFの細胞内輸送に関与していることが明らかになった。
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