研究概要 |
2 型免疫反応がアレルギー性炎症の主体であることはよく知られている。2 型サイトカインである IL-4 や IL-13 によるアレルギー炎症の形成機序を明らかにするために,IL-4 や IL-13の誘導産物の一つである細胞外マトリックスタンパク質であるペリオスチンに着目して,その機能解析や疾患との関連性について解析を進めた。その結果,ペリオスチンがアトピー性皮膚炎の慢性化機序において必須な役割を果たしていることを見出した。IL-4 や IL-13 は線維芽細胞に作用してペリオスチンを産生する。ペリオスチンはケラチノサイト上のインテグリンに結合し TSLP 産生を誘導する。TSLP は Th2 細胞分化を誘導する。つまり,アトピー性皮膚炎の病態形成において IL-4/IL-13-ペリオスチン-インテグリン-TSLP より成る悪性回路が存在し,それがアトピー性皮膚炎の慢性化を起こしていることを明らかにした。また,抗av インテグリン中和抗体はモデルマウスにおけるアトピー性皮膚炎の出現を阻害することから, ペリオスチンがアトピー性皮膚炎の治療標的となりうることを示した。さらに,アトピー性皮膚炎以外に数多くの炎症疾患(特発性間質性肺炎, 薬剤性間質性肺炎, 強皮症, 胆管細胞癌, IgG4 関連性硬化性唾液腺炎, 好酸球性中耳炎, アレルギー性鼻炎/慢性副鼻腔炎, 増殖糖尿病網膜症)にペリオスチンが関連することを示し,ペリオスチンはアトピー性皮膚炎を始めとするさまざまな炎症疾患に関与しているエフェクター分子であることを明らかにした。一方,ペリオスチンは,創傷治癒機序に重要な役割を果たしており,これがペリオスチンの生理的作用の一つとなっていることも見出した。ペリオスチンによる慢性化機序は生体側の反応によるアレルギー性炎症の慢性化機序を示した世界で初めての例だと言える。また,ペリオスチンを標的としたアレルギー疾患治療薬の開発は,細胞外マトリックスタンパク質を標的とした全く新規の作用機序を持つ治療薬の開発につながると期待される。
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