研究課題
【目的】呼吸器合胞体ウイルス(RSV)とヒトライノウイルス(HRV)は気管支喘息の発症と増悪に深く関わっているが、その詳細な機序は不明である。RSVとHRVによるヒトマスト細胞の脱顆粒に対する影響を検討した。また、生まれて初めて喘鳴を起こした3歳未満の子供の喀痰中のマスト細胞トリプターゼが増加している症例が喘息へ移行するのかを3年追跡調査を行うことを目的とした。【方法】RSV(long strain)あるいはHRV(strain HGPおよびstrain1059)を末梢血あるいは臍帯血由来培養マスト細胞に添加した。ウイルスRNAの増幅はreal time RT-PCR法、ウイルス蛋白の存在は抗体法で調べた。ヒスタミン遊離はEIA法で測定した。生まれて初めて喘鳴を起こした3歳未満の子供の喀痰あるいは鼻汁を集め、喀痰あるいは鼻汁中のウイルスRNAの検出、トリプターゼ、およびサイトカイン量測定を行った。【結果】マスト細胞にRSVは、感染しなかった。RSVおよびHRVがマスト細胞を直接活性化することはなかったが、RSVの添付によってIgE依存性の脱顆粒が増強されるリスポンダーが存在した。そのリスポンダー4例においては、RSV MOI10で低濃度のanti-IgE刺激の時のみIgE依存性の脱顆粒を有意に増強した。RSVをヒト気管支上皮細胞に感染させ、感染した上皮細胞を介してマスト細胞を活性化するかまたはIgE依存性の脱顆粒を増強するかを検討したが、脱顆粒に何ら影響を及ぼさなかった。生まれて初めて喘鳴を起こした3歳未満の子供では、86%の症例がRSVあるいは/およびHRVに感染していた。喘鳴を繰り返した症例にトリプターゼ濃度が高い傾向があった。【結論】ウイルス感染と抗原刺激が同時に起こることが喘息の発症および増悪に極めて重要であることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
臨床医の多大な協力により予想以上の鼻汁のサンプル数が集まっており、研究はおおむね順調に進んでいる。
1. RSウイルスとヒトライノウイルスによるヒトマスト細胞活性化機構の解明(マスト細胞、ウイルス実験)マスト細胞のドーナーの数を増やす。IgE依存性の脱顆粒をドーナーによってはRSウイルス添加により増強するドーナーが存在した機序を調べる。2.RSウイルスあるいはヒトライノウイルス感染後に初めて喘鳴を起こした3歳未満の子供の喀痰中のマスト細胞トリプターゼが増加している症例が喘息へ移行するのかを3年追跡調査する。(臨床研究)RSウイルスあるいはヒトライノウイルス感染後に初めて喘鳴を起こした3歳未満の子供の症例数をさらに増やし、追跡調査を続ける。集積した喀痰あるいは鼻汁中のトリプターゼ、各種サイトカイン量などのデータと臨床データの関連について統計学的な解析をおこなう。
該当なし。
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