研究課題
気管支喘息の難治化病態の気道リモデリングに細胞外基質が沈着する現象があるが、気道のTGF-βと相関している。TGF-βは主に好酸球から産生され、上皮細胞が間葉系様細胞に形態変化し細胞外基質沈着を引き起こす上皮間葉移行(EMT)を誘導することで知られている。本研究は好酸球がTGF-β-EMTという経路を介しsubepithelial fibrosisを起こすと仮説を立て、気道リモデリングの機序の解明を目指した。好酸球性白血病細胞(EoL-1)ないしヒト好酸球と気道上皮細胞を共培養したところ、EMTと考えられる気道上皮細胞の敷石状から紡錘状への形態学的変化を認め、EMTに特徴的な上皮系マーカー(E-cadherin)の低下、並びに間葉系マーカー(Vimentin、α-SMA)の上昇が各種タンパク、遺伝子レベルで確認された。共培養にて上清中のTGF-β1濃度が上昇しており、このEMTのシグナル経路はTGF-β1 ; Smad3依存性、PI3 kinase, JNK pathway依存性であった。更にEoL-1ないしヒト好酸球の生理活性保持、気道細胞へのdirect contactがEMT誘導に必須であった。マウス好酸球をマウスの気管内に投与したところ、好酸球投与群はcontrol群と比較して、気管支肺胞洗浄液中の炎症細胞数、TGF-β1濃度が有意に上昇し、肺組織では気管周囲の炎症細胞浸潤、線維化、type I collagenの沈着、E-cadherinの低下とVimentinの上昇が認められた。TGF-β1 siRNAでの前処置にて好酸球投与による気管周囲の線維化が低下した。本研究で得られた研究成果は好酸球による気道上皮細胞のEMTとそのメカニズムについて証明並びに解明するものであり、気管支喘息の難治化予防への新しい治療戦略となりえる画期的な基礎的情報を提供するものと期待される。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
PLoS One
巻: 8 ページ: 1-12
10.1371/journal.pone.0064281.