研究課題/領域番号 |
23591474
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山下 浩平 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80402858)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 好中球 / 細胞外トラップ / 活性酸素 / 一重項酸素 / 慢性肉芽腫症 |
研究概要 |
好中球細胞外トラップ(neutrophil extracellular traps, NETs)は、活性化した好中球がクロマチンを細胞外に放出して崩壊する現象で、アポトーシス・ネクローシスと並ぶ好中球の新たな細胞死(NETosis)と捉えられている。NETosisに至った好中球周囲の細菌はクモの糸に絡まるように捕えられ、放出したクロマチンに含まれる顆粒蛋白により殺菌される。活性酸素産生能が欠如した慢性肉芽腫症(CGD)患者の好中球を用いた観察から、NETs形成には活性酸素産生が必要であると報告されたが、活性酸素種の同定はなされていなかった。我々は、これまで活性酸素の一種である一重項酸素が様々な医学・生物学的作用を有することを明らかにしてきたため、NETs形成にも一重項酸素が関与すると考え研究を開始した。光増感剤であるPhotofrinに630 nmのレーザーを照射することにより一重項酸素を特異的に産生する系を利用して、CGD好中球にPhotofrinを取り込ませた後レーザー照射したところNETs形成を誘導することに成功した。また、phorbol myristate acetateで刺激した健常人好中球は高率にNET形成が認められるが、この系に一重項酸素の消去剤であるedaravoneやalpha-phenyl-N-tert-butyl nitroneを添加した場合、NETs形成が抑制されることを明らかにした。これらの所見から、NET形成には一重項酸素が重要であることを示した。最近、NETsが全身性ループスエリテマトーゼス(SLE)などの自己免疫疾患や血管炎などの炎症病態形成に関与することが報告されている。今回得られた所見から、一重項酸素の制御がこれら自己免疫・炎症性疾患の治療となり得ることが示唆され、今後の更なる研究の進展が望まれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に記載した平成23年度の計画のうち、好中球細胞外トラップの形成に重要な役割を果たす活性酸素種が一重項酸素であることを証明し、そのデータを纏めて論文投稿を行うことができた(Nishinaka Y et al. BBRC 413, 75-9, 2011)。その後、得られた所見を基に、好中球細胞外トラップの炎症性疾患の病態形成への関わりについて、痛風関節炎、血管炎、IgG4関連疾患をターゲットに研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
好中球細胞外トラップ(neutrophil extracellular traps, NETs)が種々の炎症病態の形成に重要な役割を果たすことが報告されているが、明らかでない点が多い。今後は、痛風関節炎・血管炎・IgG4関連疾患など具体的な炎症・自己免疫病態を念頭に置き、患者検体を用いたin vitro実験などを行うことにより、これら炎症病態形成におけるNETsの役割を解明する。また、平成23年度にNET形成に必須な活性酸素種が一重項酸素であることを同定できたため、一重項酸素消去剤を用いてこれらの炎症病態の制御の可能性についての検討も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度に引き続き、好中球細胞外トラップ(NETs)を観察する目的で、蛍光試薬、尿酸結晶やphorbol myristate acetateなどの化学物質などの試薬やチューブ・ディッシュなどの消耗品を中心に研究費を使用する。また、NETsと炎症性サイトカイン産生との関連を検討するために種々のELISA kitを購入する。「その他」に区分される研究費として、大学施設の電子顕微鏡利用料、動物実験施設利用料、論文投稿料などに使用する。その他、採血に協力していただいた健常人ボランティアの謝金や研究成果を発表するための学会参加費用にも使用する予定である。
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