研究課題/領域番号 |
23591482
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
大澤 勲 順天堂大学, 医学部, 准教授 (60407252)
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研究分担者 |
大井 洋之 順天堂大学, 医学部, 客員准教授 (30130438)
恩田 紀更 順天堂大学, 医学部, 助教 (60465044)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 補体制御因子 / 糖化現象 / 被嚢性腹膜硬化症 / 補体 / factor H / Properdin / C3 / 膜侵襲複合体 |
研究概要 |
1.検体の取集と検討(1)腹膜組織の収集と検討:これまでに、腹膜透析(PD)の新規導入例26人分と腹膜カテーテル抜去症例(PD終了時)27人分の腹膜組織をインフォームド・コンセントにもとに採取し保存した。内17例に細菌性の腹膜炎の既往があった。 (2)腹膜組織の染色:PAS染色、HE染色、Masson trichrome染色、AZAN染色、PTAH染色を行った。PDの継続期間が長いほど腹膜の線維性肥厚から硬化性肥厚への移行と細動脈壁の肥厚・内腔狭小化が観察され、フィブリンや硝子様物質の増加が認められた。また特に感染歴のあるものでは、好中球を中心とした炎症細胞の浸潤が観察され、病原体に対する生体防御反応が確認できた。 (3)補体の特殊染色:補体の活性化が感染防御に重要であるかについて検討するために、酵素抗体法による補体の沈着を検討した。いずれの組織にも中皮細胞・中皮下結合織・臍動脈にC3、C4、膜侵襲複合体(C5b-9)の沈着が認められたが、腹膜炎の既往がある症例では中皮下結合織にC5b-9の強い染色性が認められた。 (4)PD排液の収集:PD排液は20人分採取できた。 (5)PD排液の検討:すべての検体は、ブドウ糖濃度を測定し腹膜への糖の暴露を確認した。遠心分離を行い炎症細胞の分画を調べ、感染歴のあるものでは好中球の割合が高かった。また、三つの補体経路による病原体認識能の測定法の確立当研究室の井下(BMC Nephrol Vol.11, 34, 2010)がヒト血清対して用いたWielisa®を用いてPD排液の病原体認識能を測定したが、比較検討に十分な再現性が得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
PD患者の腹膜組織については、好中球を中心とした自然免疫の働きが確認され、背景に補体によるopsonin化及び組織障害が起きていることが判明してきている。 腹膜そのものの病理学的な検討は、順調に進行しているが、PD排液中の補体の検討が遅れている。PD液中に含まれる高濃度のグルコースが実験系に影響していると考えられ、現在測定時の希釈条件を調整中である。
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今後の研究の推進方策 |
来年度も腹膜及びPD排液を継続して収集する。腹膜組織の補体成分とAdvanced glycation endproducts (AGE)の染色症例を増やし検討する。PD排液中の補体の検討が進まない場合は、組織片もしくは排液中の細胞成分(中皮細胞、好中球等)に対し、補体とAGEの働きをFACSなどで検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費については、主に組織染色・FACSに使用する抗体やバッファーの購入に充てる。旅費については、国内学会(腎臓学会・透析医学会・補体シンポジウム)への参加・発表を予定している。
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