(1)腹膜組織の収集と検討:腹膜透析患者の腹膜組織の採取、腹膜組織の染色による炎症所見及び補体の沈着が確認され、補体活性化経路のすべて(古典的・レクチン・第2経路)の活性化が確認された。また、腹膜透析導入以前より腹膜の糖化があり、さらに透析導入により糖化が亢進することが確認された。 (2)in vitroで、培養細胞を用いて補体活性化の検討 1)ヒト尿細管上皮細胞(PTEC)を用いた補体活性化経路の検討:ヒト腹膜中皮細胞の検討に先立ち、実績のあるPTECで実験系を確立した。PTEC上では補体(プロパジン(P)、ファクターH(fH)、C3、MAC)の沈着が血清濃度依存的に認められ、血清由来の補体の沈着及び第2経路の活性化の関与が示唆された。さらに、P、fHの単独添加ではPTECへの濃度依存的な沈着を認めたが、混合添加では、競合的な沈着は示さなかった。また、血清添加前にPを先行添加すると、C3及びMACの沈着が増強したことから、第2経路及びProperdin direct pathway(PDP)の活性化の関与が示唆された。さらに、PTEC上では補体活性化を介したviabilityの低下が示された。 2)ヒト腹膜中皮細胞での補体の活性化の検討:上記プロトコルを踏襲して行った。25%血清添加によりPの沈着は認めなかったが、fHのわずかな沈着を認め、C3及びMACの沈着を認めた。また血清添加前にPを添加すると、Pの沈着とともに、C3及びMACの沈着が亢進した。このことは、腹膜中皮細胞上で補体活性化が起こることが示され、また、Pの先行添加による補体のAP及びPDPの活性化の亢進が起こる可能性も示唆された。腹腔内では恒常的に炎症が起きており、浸潤した炎症細胞が腹膜局所でPを産生することにより、補体の活性化を亢進する可能性が示唆された。
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