研究課題/領域番号 |
23591486
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
林 周平 (鄒平 周平) 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (40322185)
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研究分担者 |
奥野 寿臣 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (10221152)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 感染防御 / ウイルス |
研究概要 |
ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)はHIV-1と同様にCD4陽性T細胞やマクロファージに感染し、感染細胞を死滅させる。しかし、HHV-6感染症患者はCD4陽性T細胞が減少せず、免疫不全状態にならない。これは生体内でHHV-6に対する何らかの宿主免疫防御が働くからであるか、その機構についてはまだ解明されていない。我々は宿主細胞分子であるS100A8やS100A9の発現がHHV-6のCD4陽性T細胞への感染により誘導されることを発見した。当該研究の目的は、HHV-6感染によりCD4陽性T細胞から誘導されたS100A8、S100A9が、ウイルス増殖を制御するか否かについて解明ものである。今年度は、S100A8, S100A9によるHHV-6増殖を制御する機構について解析した。特に、HHV-6感染細胞からS100A8/S100A9を分泌しているかどうかについて検討した。HHV-6をCD4陽性T細胞株MT4細胞に感染させて、感染細胞培養上清中のS100A8/S100A9をELISA法により測定した。その結果、感染細胞培養上清中のS100A8/S100A9が検出されなかった。このことから、HHV-6感染により誘導されたS100A8/S100A9がウイルスタンパクと結合することによって分泌されなかったことが示唆された。そこで、S100A9とウイルスタンパク質との相互作用について検討を行った。その結果、S100A9とHHV-6がコードするU83タンパク質との相互作用することを明らかにした。U83はウイルス性ケモカインであり、この相互作用がHHV-6感染機構や病原性において何らかの役割を果たしていることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予測の結果は、HHV-6がCD4陽性T細胞に感染すると、S100A8やS100A9が誘導され、それらはS100A8/S100A9へテロダイマーを形成し、細胞から分泌される。しかし、今年度解析の結果、HHV-6感染細胞培養上清中のS100A8/S100A9が検出されなかったので、HHV-6感染により誘導されたS100A8/S100A9がウイルスタンパクと結合することによって分泌されなかったことが示唆された。そこで、当初の研究計画を変更し、S100A9とウイルスタンパク質との相互作用について検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後引き続き、S100A8, S100A9によるHHV-6増殖を制御する機構についての解析を進めていく。S100A9とHHV-6がコードするU83タンパク質との相互作用することを明らかにしたので、その相互作用がHHV-6感染機構や病原性においての役割を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.S100A9とHHV-6がコードするU83タンパク質との相互作用することを明らかにしたので、S100A9と相互作用するU83タンパク質の最小部位の同定を行う。2.S100A9とU83遺伝子をCD4陽性T細胞株あるいは293T細胞にコートランスフェクションし、培養細胞上清中のS100A9とU83タンパク質の量を測定する。3.S100A8、S100A9がマクロファージを介することなく直接CD4陽性T細胞に作用し、HHV-6の増殖を制御するか否かを検討するため、大腸菌で作成したGST-S100A8とGST-S100A9の融合蛋白質を、MT4細胞に加え、HHV-6感染後ウイルス増殖をリアルタイムPCRにより測定する。同時にサイトカインの産生発現をリアルタイムRT-PCRとELISA法により測定する。さらに、S100A8、S100A9を強制発現させたMT4細胞に、HHV-6を感染させ、ウイルス増殖をとサイトカインの産生発現を同様に測定する。
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