研究課題
小児期にビタミンDが不足すると、乳児けいれん、O脚、低身長、運動発達障害などを呈するビタミンD欠乏症を発症する。近年世界的にビタミンD欠乏症が増加しており、紫外線不足や栄養など環境因子の変化が背景にある。しかし、環境因子だけで説明できない例も多いことから、我々は遺伝性素因の関与もあると考えた。そこで、本研究では、ビタミンD欠乏症の疾患感受性遺伝子の同定を行った。全国からビタミンD欠乏性くる病と診断された症例の集積を行い、これまでにゲノムワイド関連解析により血中ビタミンD濃度との関連が報告された遺伝子多型、及び既知の骨代謝疾患の疾患感受性遺伝子多型について解析を行った。正常対照と比較して解析した結果、ビタミンD受容体、ビタミンD結合蛋白、NAD合成酵素の多型に有意差がみられた。ビタミンD受容体については、有意差のあった多型が隣接しており、ハプロタイプでの解析を行った。その結果、4つの多型のハプロタイプを用いると、特定のハプロタイプには、オッズ比5.6(95%信頼限界1.92-16.40)のリスクがあることがわかった。さらに、これらの多型の有無と臨床症状の関連性を検討した。発症年齢、環境要因の数、血中カルシウム濃度、血中25(OH)D 濃度, 血中1,25-dihydroxyvitamin D 濃度について検討を行ったが、いずれも有意差は認められなかった。この結果から、ビタミンD欠乏症の発症には、遺伝因子の関与があると考えられた。つまり、ビタミンD結合蛋白による血中ビタミンD濃度の低下に加え、ビタミンD受容体の多型によって、欠乏による影響を受けやすい体質を生じていることが推察された。また、臨床的にビタミンD欠乏症と同様の症状経過を呈する複数の症例において、遺伝性くる病であることが判明し、くる病における遺伝子解析の有用性が明らかとなった。
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