研究課題
スクリーニング指標の検証:CPT-II欠損症の偽陰性対策として採用した新たなスクリーニング指標とその陽性例に対する精密検査の手順を確立して試験研究に適用し、有用性が確認された。B12反応型メチルマロン酸血症にて偽陰性例が発生したことを受け、指標値のカットオフ値を下げることを試みたが、偽陽性率が高くなるので、多くのスクリーニング機関で利用可能な二次検査法を開発する必要性が明らかとなった。CPT-I欠損症のスクリーニング指標を、タンデムマス・スクリーニングで発見された患児と急性発症後診断された患児の新生児期濾紙血での測定値から検討し、重症度にかかわらずカットオフ値は妥当であることを明らかにした。脂肪酸酸化異常症の簡易精密検査法の開発:CPT-II欠損症陽性例に対する精密検査法として末梢リンパ球を用いた脂肪酸酸化能試験の有用性の検証が進んだが、軽症型での値の分布が対照群の値と重複するため、遺伝子解析では異常が無い偽陽性例が存在した。ガスクロマト質量分析計(GC/MS)を用いた濾紙血中有機酸分析:濾紙血中プロピオニルカルニチン上昇例における濾紙血中メチルマロン酸濃度の高感度測定がメチルマロン酸血症診断に有用であるだけでなく、濾紙血中3-ヒドロキシプロピオン酸濃度高感度測定が軽症型を含めたプロピオン酸血症の化学診断にきわめて有用であることを明らかにすることが出来た。また、グルタル酸血症1型スクリーニングにおける濾紙血中グルタル酸濃度高感度測定についても、I次スクリーニングでの偽陽性率を減少させる目的で有意義であることも明らかとなった。更に、メープルシロップ尿症スクリーニングにおける濾紙血中分枝鎖2-ヒドロキシ酸濃度の高感度測定についても、バリン・ロイシン軽度上昇による偽陽性率を減少させる目的で有意義であることも明らかに出来た。
2: おおむね順調に進展している
スクリーニング指標の検証:脂肪酸酸化異常症におけるスクリーニング指標の妥当性については、分析機器間での測定値のズレを考慮した補正を行うことを前提にすれば、ほぼ実証された。有機酸代謝異常症とアミノ酸代謝異常症については、更に新規の指標を開発する必要がある。脂肪酸酸化異常症の簡易精密検査法の開発:末梢リンパ球を用いる限り脂肪酸酸化能の評価は誤差が大きいというデータが蓄積されており、単一種の培養細胞を測定に適した数量だけ得ることにより、更に特異性を向上させることができると考えられ、培養方法を更に検討して、酵素活性を適切に表現出来る系を確立する必要がある。ガスクロマト質量分析計(GC/MS)を用いた濾紙血中有機酸分析:GC/MSによる濾紙血中有機酸分析が二次分析法として有用であることを明らかに出来たが、スクリーニングに使用しているのは液体クロマトグラフ・タンデム質量分析計(LC/MS/MS)であるので、この機器しか所有していない施設ではこの機器による二次検査が出来ることが必須である。この機器を使って多くの有機酸が感度良く測定出来るかどうかの検討がまだ出来ていない。
平成23年度および平成24年度において検証した指標以外に、特にホモシスチン尿症用の指標を検討する。またB12反応型メチルマロン酸尿症に対するスクリーニング指標も検討する。有機酸代謝異常症の陽性例に対する二次検査法として、平成23年度および平成24年度にはガスクロマト質量分析計による濾紙血中有機酸分析を検討したが、更に汎用性を高めるために液体クロマトグラフ・タンデム質量分析法での濾紙血中有機酸分析について実用性を検討し、さらに多くの有機酸が分析可能か検討する。末梢リンパ球を用いた脂肪酸酸化能試験では、軽症型と対照群との区別が困難であるので、培養リンパ球を用いて感度と精度を上げる方法に取り組む。
分析機器の性能維持のために消耗部品を交換しつつ整備を行う。液体クロマトグラフ・タンデム質量分析法での分析用にLCカラムなどを購入する。培養細胞を用いた実験用に試薬類を購入する。
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Brain Dev
巻: 35 ページ: 449-453
10.1016/j.braindev.2012.06.013
日本マス・スクリーニング学会誌
巻: 23 ページ: 12-14
巻: 22 ページ: 49-60
http://www.med.u-fukui.ac.jp/home/ufms/file/kenkyu/welcome.html