研究課題/領域番号 |
23591491
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
平澤 孝枝 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (10402083)
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研究分担者 |
久保田 健夫 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (70293511)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ストレス / エピジェネティクス / 発達障害 |
研究概要 |
1.機能的メカニズムの解明・・・これまでにマウス海馬培養神経細胞にストレスホルモンであるコルチコステロンを投与すると神経細胞の自発的細胞内カルシウムスパイク、同期現象の増加が見られ神経活動の興奮性が活性化する事が分かった。細胞内カルシウムイメージング法を用いてこのメカニズムを検証した結果、以下の事が本研究で示された。(1)コルチコステロン刺激による同期現象の活性化はンNMDA受容体、AMPA受容体を介した細胞外カルシウムイオンの流入によるものである。(2)細胞内のストアからの流出作用はなかった。(3)膜非透過性のコルチコステロン(cor-BSA)で同様の現象が確認され、またグルココルチコイドの賦活剤であるデキサメタゾンによって同様の活性化が認められた。したがって、この作用は膜型のグルココルチコイド受容体を介した作用である。2.遺伝学的調節機構の解明発火現象が増幅したメカニズムを本年度はmRNAと蛋白レベルをreal time-PCR法とウェスタンブロティング法で確認した。その結果NMDA受容体のNR2AとNR2Bの両サブユニットの蛋白レベルがコルチコステロン刺激によって増加した。一方でmRNAは逆に刺激によって速やかに減少した。翻訳阻害剤であるシクロヘキサミド処理によってこの反応は抑制された。従って、NMDA受容体の翻訳亢進が示唆された。一方でAMPA受容体やNR1サブユニットの変化は見られなかった。一方で抑制性のGABA受容体の一つであるGABAa受容体についてはコルチコステロン刺激で増加が見られた。しかしながら翻訳阻害剤では抑制されなかった。したがって、抑制性はこれまでの通り核型受容体が遺伝子転写を制御して反応を促進していると考えられた。このように興奮性と抑制性で転写や翻訳のスピードや制御機構を使い分ける事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究目的である「ストレスホルモンの神経細胞の活性化におけるシグナル伝達調節作用」については達成目標をクリア出来た。24年度の「関連分子の発現変動とDNA修飾作用」について現在検討中である。また脳機能形成や脳機能における活性化の役割を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ストレスホルモンによる神経細胞の活性化がグルタミン酸受容体を中心としたシナプス伝達調節の制御によって行われ、またそれが転写制御よりも翻訳制御機構を介して行われているという本研究の成果からメカニズムの概要が分かったが具体的にそのメカニズムがストレス制御機構や脳機能において何を示しているのか不明である。従って次年度は脳組織を維持した系を中心に電気生理や行動実験をおこなっていく計画である。また、使用金額に関しては昨年度は培養細胞を用いた実験が多かった一方で本年度はマウスの個体を用いた行動実験や組織を用いた実験が主要となるため本年度に予算を繰り越し設備や消耗品(動物飼育費等)に充てた。またDNAのメチレーションアレイを含む解析費として本年度予算に繰り越し、計上した。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.海馬スライスにおけるコルチコステロンの神経機能調節作用:コルチコステロンの神経細胞への作用が組織レベルで何の役割を持つのか神経回路網を維持した急性スライス、および海馬スライス培養細胞を作製し、機能解析を行う。<実験方法>10日齢のマウス脳より海馬組織を摘出し、急性スライスまたは海馬スライス培養細胞を作製し、スライスをコルチコステロン処理後電気生理実験によって機能変化を追跡する。2.ストレス負荷マウスにおける海馬神経機能の変化とストレス耐性機能獲得の関連性:新生児ストレス負荷マウスの脳スライスを作製し、関連する分子の発現や神経機能の変化を解析、測定する。<実験方法>生後1日目の新生児マウスに母子分離ストレスを与え各ステージの脳サンプルを摘出し関連分子のDNAのメチル化やヒストン蛋白の修飾変化を調べる。またそれに伴う脳機能の変化をオープンフィールド等の行動実験を用いて調べる。
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