研究課題/領域番号 |
23591492
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
夏目 淳 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60422771)
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研究分担者 |
石原 尚子 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (30393143)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ウェスト症候群 / 拡散テンソル画像 / TBSS / 髄鞘化遅延 / 発達指数 |
研究概要 |
新規に潜因性ウェスト症候群を発症した患者12人において経時的に、発症時、およびACTH療法などの初期治療を終えた1歳時、2歳時において3テスラ高磁場MRIで拡散テンソル画像を撮像した。生後12カ月に撮像された画像をソフトウェアFSLのTBSS(tract-based spatial statistics)解析を用いて、平均年齢12カ月の対照群11例と比較した。対照と比較して異常が見られた白質における異方性の定量値を発達指数、FDF-PETの異常の有無と比較した。 その結果、通常のMRI画像の視察的評価では異常は認められなくてもTBSS解析によって脳梁膝部・体部から深部白質に及ぶ広範な異方性の低下が明らかになった。異方性の固有値eigen valueを評価したところ、特に白質線維と垂直な方向への拡散が上昇していることがわかった。また、1歳時の発達指数は33から110と重い発達遅滞を認める患者から正常発達の患者まで多様であったが、拡散テンソル画像の異方性の値は1歳時の発達指数と有意な相関を示した。一方、FDG-PETにおける皮質代謝異常の有無を視察的に評価した結果と、拡散テンソル画像の結果には現時点で明らかな関連がみられなかった。 白質線維と垂直方向への拡散上昇は脳成熟の遅れによる髄鞘化遅延が原因と考えられた。潜因性ウェスト症候群においては大脳白質の髄鞘化、成熟の遅れが起こっており、それが精神運動発達にも影響を与えていることが推測された。PETの視察的評価のみでは十分な結果が得られなかったことから、今後はPET解析手法を改善して、大脳皮質の活動異常と白質成熟の遅れの関連を明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
順調に新規発症のウェスト症候群の患者を登録し、拡散テンソル画像の撮像を行っている。一部の患者において画像にノイズの混入が多く使用できないものがあったが、ほとんどの患者では解析に使用できる画像が撮像できている。12例の患者で生後12カ月における拡散テンソル画像の解析を行った。ソフトウェアFSLを用いてのTBSS(tract-based spatial statistics)解析も問題なく行うことができた。対照群と比較しウェスト症候群の患者においては脳梁膝部・体部から深部白質に及ぶ広範な異方性の低下が明らかになった。さらに拡散テンソル画像の異常が精神運動発達の遅れと相関することが確認され、臨床的有用性も明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、脳波所見、FDG-PET所見と拡散テンソル画像の関連を検討することで、これまでの研究で明らかになった白質の障害が引き起こされる病態を明らかにする。脳波は初期治療が行われた後の焦点性異常波の分布を解析して拡散テンソル画像の異常との比較を行う。FDG-PETの評価は視察的に行うだけでは不十分なため、画像解析技術を用いて定量的に評価を行う。 また、生後24カ月で撮像した拡散テンソル画像を解析し、これまでの研究で明らかになった生後12カ月での異常がどのように変化するのかを解析する。この変化が、発作や発達の予後と相関するかを評価し、経時的変化の臨床的意義を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
患者の拡散テンソル画像、FDG-PET、脳波のデータを転送、保存するために光磁気ディスクなどの消耗品、通信費、研究補助員への謝礼に使用する。また、国内、国外の学会で研究成果の発表を行うため旅費として使用する。
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