研究課題/領域番号 |
23591492
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
夏目 淳 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60422771)
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研究分担者 |
石原 尚子 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (30393143)
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キーワード | ウェスト症候群 / 拡散テンソル画像 / 髄鞘化遅延 / 発達指数 / 脳波 |
研究概要 |
新規に潜因性ウェスト症候群を発症した患者における拡散テンソル画像の撮像を継続している。発症時、およびACTH療法などの初期治療を終えた生後12カ月時、24カ月時の計3回、3テスラ高磁場MRIで撮像している。 生後12カ月の画像をソフトウェアFSLのTBSS(tract-based spatial statistics)解析を用いて、平均月齢12カ月の対照13例と比較したところ、通常のMRIでは異常がみられなくてもTBSS解析によって大脳深部白質の広範な異方性の低下が確認された。異方性の固有値の評価から、特に白質線維と垂直な方向への拡散が上昇していることがわかった。また、生後12カ月時の発達指数と拡散テンソル画像の異方性の有意な相関を示した。 生後12カ月におけるてんかん発作、脳波異常の有無と拡散テンソル画像の異常を比較したところ、てんかん発作や脳波異常が治療後も存続している患者で白質の異常が強いことがわかった。 生後24カ月の画像を同様にTBSS解析で平均月齢24カ月の対照12例と比較したところ、有意な異常は認められなかった。しかし、発達指数が70未満の発達遅滞が見られる患者7例に限定して対照群との比較を行ったところ、広範な白質の異常が存続することがわかった。 白質線維と垂直方向への拡散上昇がみられたことから、拡散テンソル画像の異常は脳成熟の遅れによる髄鞘化遅延が原因と考えられた。ウェスト症候群においては大脳白質の髄鞘化、成熟遅延が起こっており、それが精神運動発達に影響を与えていることが推測された。また、治療後にも存続するてんかん発作や異常神経活動が大脳白質の成熟に悪影響を及ぼしていることがわかった。生後24カ月では発達の経過が良好な患者では脳成熟が進み対照群と差がみられなくなる一方で、発達遅滞がみられる患者では大脳白質の異常が存続していることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
順調に新規発症のウェスト症候群の患者を登録し、拡散テンソル画像の撮像を行っている。一部の患者において画像にノイズの混入が多く使用できないものがあったが、ほとんどの患者では解析に使用できる画像が撮像できている。2012年度終了時で2歳まで撮像が完了した患者が15例、1歳まで完了した患者が21例である。ソフトウェアFSLを用いてのTBSS(tract-based spatial statistics)解析も問題なく行うことができた。解析によって、1歳と2歳における白質の異常の違い、発達指数との関連、てんかん発作や脳波異常との関連を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
ウェスト症候群における拡散テンソル画像の異常が髄鞘化遅延であることを確認するため、T2強調画像における白質の信号強度から判定した髄鞘化レベルとの相関を検討する。またFDG-PETによって評価した皮質ブドウ糖代謝量の低下との関連を検討することで、白質の障害が引き起こされる病態を明らかにする。FDG-PETの評価は視察的に行うだけでは不十分なため、画像解析技術を用いて定量的に評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
患者の拡散テンソル画像、FDG-PET、脳波のデータを転送、保存するために光磁気ディスクなどの消耗品、通信費、研究補助員への謝礼に使用する。また、国内、国外の学会で研究成果の発表を行うため旅費として使用する。
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