研究課題/領域番号 |
23591495
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
竹島 泰弘 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 特命教授 (40281141)
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研究分担者 |
八木 麻理子 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60362787)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | アンチセンスオリゴヌクレオチド / 筋ジストロフィー / エクソンスキッピング / 線維化因子 |
研究概要 |
Duchenne型筋ジストロフィー(以下DMD)は、進行性遺伝性の筋疾患であり、20-30才台で死に至る重篤な疾患であるが、現在のところ有効な治療法はない。私たちはアンチセンスオリゴヌクレオチド(以下AS-oligo)によってエクソンスキッピングを誘導するDMDの治療法の有効性を、世界で初めて臨床的に明らかにした。しかし、この治療の臨床応用を広げるためには、その効果をさらに高めることが不可欠である。DMDにおける病態の主体は筋組織の壊死・再生であるが、近年、本疾患の進行において、筋組織の線維化が重要な役割を果たしていることが明らかにされ、TGF-βなどの線維化促進因子およびそれらを制御する因子の動態が注目されている。アンチセンス治療によってジストロフィンの発現が誘導される際の線維化に関わる因子の動態を明らかにすることにより、DMDの治癒過程における線維化の制御機構を明らかにすることができ、さらに、これらの因子を修飾することによって、従来より検討しているアンチセンス治療の有効性をより高める新たな治療戦略を見いだせる可能性がある。 アンチセンス治療における、線維化を制御する因子の動態を解明するため基礎検討として、エクソン45のスキッピングを誘導するAS-oligoであるAO85の薬効動態を検討した。18塩基RNA/ENA (2’-O,4’-C-ethylene-bridged nucleic acid)キメラオリゴであるAO85を合成し、in vitroスプライシング系を用いて、検討を行った。半定量PCR法によって、エクソン45スキッピングを解析したところ、濃度および時間依存的にエクソン45スキッピングの誘導がみられ、EC50が58.0nMであることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アンチセンス治療における線維化因子の動態を解明するために、現在、臨床への応用を進めているAS-oligoであるAO85の薬効動態を検討し、至適条件を見出す必要がある。23年度は、この点を明らかにするためにin vitroスプライシング系を用いた解析を進めた。その結果、実施概要に示した結果を得ることができた。概ね予定通り検討を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
23年度のAO85の薬効動態の検討により、至適条件が明らかとなった。この条件をもとに、DMD筋培養細胞、DMDモデルマウス、さらにDMD症例においてAO85投与を行った際の、エクソンスキッピング効果の検証、さらにその治療過程における線維化因子の動態を明らかにしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
DMDモデルマウスを用いた研究、DMD症例筋培養細胞を用いた研究は、申請者の施設において頻繁に行われ、安定した成績を収めている。そのため、本研究を実施するにあたり、新たな設備備品を購入する必要は無い。DMD症例および筋培養細胞による研究試薬として細胞培養用試薬を、またmRNA発現の網羅的解析のためにマイクロアレイ解析用試薬を購入する。mRNAおよび蛋白の定量的解析のために、定量PCR用試薬・ウエスタンブロット用試薬を購入する。免疫組織染色用試薬は、組織における蛋白発現の局在を調べるために使用する。AS-oligoおよびPCR用のプライマーなどとして、オリゴヌクレオチドを追加合成する必要がある。尚、今年度中に培養細胞における検討の準備を開始する予定であったが、開始できなかったため、3,013円を次年度使用とした。次年度は、培養細胞における検討の準備から始めることとする、
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