研究課題
私たちはアンチセンスオリゴヌクレオチド(AS-oligo)によってエクソンスキッピングを誘導するDuchenne型筋ジストロフィー(DMD)治療法の有効性を明らかにした。しかし、この治療の臨床応用を広げるためには、その効果をさらに高めることが不可欠である。DMDにおける病態の主体は筋組織の壊死・再生であるが、近年、本疾患の進行において、筋組織の線維化・炎症が重要な役割を果たしていることが明らかにされた。アンチセンス治療によってジストロフィンの発現が誘導される際の線維化・炎症に関わる因子の動態を明らかにすることにより、これらの因子を修飾することによって、アンチセンス治療の有効性をより高める新たな治療戦略を見いだせる可能性がある。線維化の原因として重要なもののひとつに炎症がある。そこで、尿中のプロスタグランジンD代謝産物の定量を行ったところ、DMD患者では対象に比べて排泄量が増加しており、さらに、病状の進行する8歳以降において、より著しく増加することが明らかとなった。このことから、プロスタグランジンDの関与する炎症がDMDの病態に関与していることが示唆された。これらの結果を踏まえ、DMD症例に対しAS-oligo投与を行い、その有効性と線維化に関与する炎症性サイトカインの検討を行った。三次元歩行解析装置による検討では、重心の動揺性などで改善が見られ、本治療の有効性が示唆された。さらに治療経過においてIFN-γ、IL-6、IL -12などの改善傾向がみられた。以上の結果から、DMDの病態において、炎症・線維化が病態に関与していること、さらにAS-oligo治療の過程において、炎症性サイトカインの変動も治療効果に関与していることが示唆された。これらの結果は、アンチセンス治療において線維化・炎症を制御することにより、治療の有効性をさらに高めることができる可能性を示すものである。
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