研究概要 |
昨年度に引き続き、インフルエンザ脳症で高値を示すIL-6, IL-8, MCP-1などをはじめとするサイトカイン、ケモカイン(他に、IL-1beta、IFN-gamma、TNF-alphaなど)が、血液脳関門を構成する細胞である、脳血管内皮細胞およびアストロサイトに与える影響について検討を行った。さらに、中枢神経における炎症に深く関わっているミクログリアについても検討を加えた。 アストロサイトについては、申請者らが樹立したラット不死化細胞株に加え、ラット胎仔・新生仔からの初代培養細胞も用いた。また、ミクログリアについてもラット新生仔からの初代培養細胞を用いた。血管内皮細胞については、昨年度に引き続き、マウス脳血管内皮細胞の不死化細胞株を用いた。 アストロサイトの足突起は、血管内皮細胞に接し血液脳関門の機能の一部を担っていると考えられているが、その足突起に集積し、中枢神経系の水移動調節に関わっているアクアポリン4(AQP4)の発現が、サイトカインによってどのような影響を受けるか検討を行った。アストロサイトをIL-1beta、IFN-gamma、TNF-alphaで刺激し、その後のAQP4の発現変化をmRNA (RT-PCR)、タンパク(Western blot、免疫組織染色)レベルで調べたところ、これらサイトカインの刺激により、発現増加が見られること、さらに、小児急性脳症を増悪させるといわれているジクロフェナックナトリウム(以下DCF)を同時に作用させると、さらに発現上昇することが判明した。 ミクログリアについては、サイトカインの刺激による実験系が確立し、各種指標を用いて、その活性化状態の検討を行なった。DCF存在下で、IL-1beta、IFN-gamma、TNF-alphaで刺激すると、iNOSが強く誘導され、NOの産生が高まると共に、貪食作用も高まることが判明した。
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