研究課題/領域番号 |
23591510
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
綾田 稔 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90222702)
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研究分担者 |
扇本 真治 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80292853)
佐久間 悟 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80570605)
小倉 壽 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10115222)
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キーワード | 亜急性硬化性全脳炎 / 麻疹ウイルス / 干渉現象 |
研究概要 |
亜急性硬化性全脳炎(SSPE)患者より分離された麻疹ウイルスには、脳内で感染を拡大できる特徴的な変異が生じている。この特徴を逆に利用すれば、SSPEの特異的治療法を開発することが可能である。また、ゲノムの大部分を欠いた欠損粒子はウイルスの増殖を抑制することが知られており、この干渉現象を治療に応用できると考えている。今年度は、麻疹ウイルスのH蛋白をコードする遺伝子を欠損した組換え麻疹ウイルスの作製を試みた。まず、T7ポリメラーゼと麻疹ウイルスのH蛋白を発現したBSRT7-IchH細胞に麻疹ウイルスのN蛋白、P蛋白、L蛋白を発現するプラスミド、およびH遺伝子を欠損させた麻疹ウイルスゲノムをコードしたプラスミドをトランスフェクトし、麻疹ウイルスのH蛋白を発現したB95a-IchH細胞との共培養を行った。また、これとは別の方法として、H遺伝子欠損ゲノムおよびF遺伝子欠損ゲノムをもつ2種のプラスミドをトランスフェクトすることにより、それぞれの欠損を補完する発現系を試みることにした。この目的のため、H遺伝子欠損ゲノム、もしくはF遺伝子欠損ゲノムをもつプラスミドを作製し、欠損ウイルス作製の準備を行っている。 また、将来のより有効かつ安全な欠損干渉型ウイルスの作製をめざすため、前年度に引き続き、SSPE大阪1株のF蛋白のアミノ酸置換とハムスターにおける神経病原性との関連を検討した。また、実際の患者への応用を考慮して、ワクチン株が潜在的にもつ神経病原性およびその増強に関与する変異についても検討した。その結果、現行麻疹ワクチンの一つであるCAM-70株そのものにも弱いながら神経病原性が存在し、そのF遺伝子にA167T変異、あるいはM94V+A167T変異を導入したところ、ハムスターに対して致死的なウイルスに変化した。これらの結果は、今後のワクチンの改良、安全性の担保にも有益な情報と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
麻疹ウイルスH蛋白を欠損するウイルスの作製には未だ成功に至っていない。一方、将来の臨床応用に向けた麻疹ワクチン株を基にウイルスを作製するための基礎実験から、F蛋白のアミノ酸置換と神経病原性との関連に関する証拠がさらに得られ、SSPEの神経病原性におけるF遺伝子の変異の役割が明白になったと同時に、SSPEのF蛋白の機能の変化を逆に応用する本研究の合理性が再確認されたと考えられる。また、現行のワクチン株に関しても、これまで神経病原性がほとんど検討されてこなかったことから、ワクチンの副反応の再考が促されると思われる。また、本研究以外の目的に用いる場合においても、ワクチン株を基にした組換えウイルスの応用に注意を要することが示唆される。
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今後の研究の推進方策 |
トランスフェクションの効率改善を行って、H蛋白発現細胞とH遺伝子欠損組換え麻疹ウイルス作製用のプラスミドを用いて、H遺伝子欠損組換え麻疹ウイルスの作製に挑戦する。もう一つの方法として、H遺伝子欠損プラスミドとF遺伝子欠損プラスミドのコトランスフェクションの実験系によりH遺伝子欠損組換え麻疹ウイルスの作製を行う。その後のH遺伝子欠損ウイルスの増殖にはH蛋白発現B95a細胞を利用することが出来ると考えている。得られたウイルスを、in vitroの感染実験、ハムスターへの感染実験に使用する。ウイルスを感染させたハムスターにおける脳内での挙動をウイルス学的、病理学的に検討する。また、これと平行して、欠損干渉型麻疹ウイルス(DI粒子)の作製を行う。 また、SSPE株のFおよびH遺伝子の構造と機能、神経病原性との関連性についての解析を前年度に引き続き検討する。特に、SSPE大阪1株、大阪2株のH蛋白のレセプター指向性の解析や神経病原性に関与する領域の特定に向けた実験を中心に行う。具体的には、既知の麻疹ウイルスのレセプター(SLAM、CD46、Nectin-4)との結合能を消失させると予想される各種の変異をH遺伝子に導入したプラスミドを作製し、F遺伝子と共に細胞にトランスフェクションを行ってH蛋白とF蛋白を共発現させて細胞融合能を比較検討する実験により、レセプター利用能の有無を判断する解析を行い、SSPE株のH蛋白が未知のレセプターを利用して感染拡大を行っていることを証明し、さらにはそれに関与するH蛋白の領域を明らかにするための検討を行う。また、CAM-70株の神経病原性を規定する遺伝子の特定についても前年度に引き続き検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画より若干の遅れが生じており、特に動物実験に必要な経費が不要であったために、次年度に繰り越して使用することが適切と判断した。 研究費は、組換えウイルスの作製および動物実験に使用する他、塩基配列の決定等のための消耗品に使用する。特に新たな備品は必要ではないが、不可欠な備品の修理の必要が生じた場合には修理費に当てる。また、これまでに達成された結果をまとめて論文にするため、論文の校正・投稿・掲載のための費用を予定している。
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