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2011 年度 実施状況報告書

ライソゾーム病神経変性におけるオートファジー機能の解明と誘導・阻害による治療研究

研究課題

研究課題/領域番号 23591511
研究機関大阪市立大学

研究代表者

田中 あけみ  大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30145776)

研究分担者 前田 光代  大阪歯科大学, 歯学部, 助教 (40122080)
瀬戸 俊之  大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60423878)
澤田 智  大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60585991)
研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードライソゾーム病 / 神経変性 / オートファジー
研究概要

ライソゾーム病は、ライソゾーム内酵素の欠損により細胞のライソゾームに基質となる物質が蓄積し、細胞死を来す。ライソゾーム病の神経障害のメカニズムとして、ライソゾーム内の基質蓄積が起点となりオートファジーが亢進することが重要とされている。ライソゾーム病の神経障害の機序を解明するため、ライソゾーム病のひとつであるムコ多糖症II型のモデルマウス(IDS遺伝子KOマウス)について、脳組織を形態学的に検討した。このマウスは、3~4か月齢で骨変形、肝腫大が明らかになり、神経症状も出てきて動きが拙劣となる。5か月齢のモデルマウスの脳組織を電子顕微鏡により形態学的に検討した。大小の空胞で細胞質が充満した細胞が脳組織全体に認められた。空胞化した細胞の数は、大脳と線条体にきわめて多く、海馬、小脳では比較的少なかった。空胞化した細胞は、ほとんどがミクログリアであったがアストロサイトも存在した。空胞の内容は、微細顆粒状~糸屑状のものがほとんどで、ムコ多糖が貪食されライソゾーム内に蓄積し膨化したものと推測された。層状の構造物の蓄積も散見され、ミトコンドリア等の細胞内小器官がオートファジーを受け、ライソゾーム内に貯留していると思われた。また、脂質(ガングリオシド)の蓄積を示唆する層状構造も一部に認められた。層状の蓄積物はアストロサイトに多くある傾向であった。他方、神経細胞、プルキンエ細胞、顆粒細胞には著変が認められなかった。さらに、空胞化したミクログリアが神経細胞に接着して存在する像が多数認められた。血管周囲にも同様のミクログリアが接着して存在し、内皮細胞には変化が認められなかった。また、血管周囲の血液脳関門を形成するアストロサイトのfoot processが腫大し、浮腫状を呈している像が多数認められた。これらの病変は、ムコ多糖症II型における神経変性のメカニズムを知るうえで重要な所見と考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

免疫組織染色の条件設定がうまくいかず、時間がかかってしまった。

今後の研究の推進方策

病中期と推測されるムコ多糖症II型モデルマウス(5か月齢)の形態学的検索から、病像の中心が神経細胞でなくミクログリアであることが確認された。この結果を踏まえ、ムコ多糖症II型の神経病変は、病気の起点となるムコ多糖の蓄積、それを貪食するミクログリアの空胞化から、どのようなステップを経て神経症状を呈するようになるのかを病末期のマウス(10~12か月齢)を同様にして検索することにより検討する。また、オートファジーの亢進が神経変性にどの程度関与しているか、抗LC3抗体を用いた免疫電顕およびウェスタンブロット法により検討する。さらに、ガングリオシドはアポトーシスの誘導シグナルとなると言われていることから、ライソゾーム内に蓄積する層状構造物がガングリオシドであることを検証するため、抗ガングリオシド抗体による免疫染色も合わせて行う。現在、臨床現場で用いられている酵素製剤を静脈内投与あるいは脳室内投与し、形態学的にトルイジンブルーの染色性の低下や空胞細胞の減少などの有意な変化を認めるかどうかを検討する。さらに、オートファジーを阻害する薬剤(3-methyladenine、bafilomycin A1、chloroquine、clarithromycineなど)を経口投与して、酵素製剤単独よりも良好な効果が得られるかを検討する。

次年度の研究費の使用計画

モデルマウスの飼育、維持のため、および抗体等の試薬の消耗品に8~9割の支出を予定。研究成果の発表のための学会出張を国内で1~2回を計画。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (8件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] ライソゾーム病のマス・スクリーニングとこれに関わる遺伝カウンセリング2011

    • 著者名/発表者名
      田中あけみ,鈴木 健,奥山虎之,藤川研人,坂口知子,小田絵里,藤 直子,斎藤三佳,澤田 智,北川照男
    • 雑誌名

      日本マス・スクリーニング学会誌

      巻: 21 ページ: 15-19

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 乾燥濾紙血を用いた糖原病II型の酵素学的スクリーニング法の研究:免疫捕捉酵素活性測定法と競合酵素阻害法の比較2011

    • 著者名/発表者名
      藤川研人、鈴木 健、穴澤 昭、田中あけみ、大橋十也、衛藤義勝、大和田操、北川照男
    • 雑誌名

      日本マス・スクリーニング学会誌

      巻: 21 ページ: 233-241

    • 査読あり
  • [雑誌論文] エキスパートが教える研修医のための薬の使い方 酵素補充療法2011

    • 著者名/発表者名
      田中あけみ
    • 雑誌名

      小児科診療

      巻: 74 ページ: 804-807

  • [雑誌論文] ムコ多糖症2011

    • 著者名/発表者名
      田中あけみ
    • 雑誌名

      こどもケア

      巻: 6 ページ: 79-84

  • [学会発表] 新生児スクリーニングにおいて発見されたiduronate-2-sulfatase遺伝子のpseudodeficiency allele2011

    • 著者名/発表者名
      澤田智、田中あけみ、鈴木健、奥山虎之、藤井研人、坂口知子、工藤聡志、小田絵里、藤 直子、斎藤三佳、北川照男
    • 学会等名
      第16回日本ライソゾーム病研究会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2011年9月28-30日
  • [学会発表] Efficacy of Hematopoietic Stem Cell Transplantation for the patients with MPS II: A nationwide survey in Japan2011

    • 著者名/発表者名
      Akemi Tanaka
    • 学会等名
      3rd Educational Forum for Families and Caregivers on Mucopolysaccharidoses(招待講演)
    • 発表場所
      Taipei, Taiwan
    • 年月日
      2011年9月23-25日
  • [学会発表] Mucopolysaccharidosis: A pitfall of neonatal screening in mucopolysaccharidoses and other lysosomal storage diseases and problems in genetic counseling2011

    • 著者名/発表者名
      Akemi Tanaka
    • 学会等名
      Satelite Symposium of ACIMD/LSD Screening in Tokyo(招待講演)
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2011年8月4-6日
  • [学会発表] Long-term efficacy of hematopoetic stem cell transplantation in the patients with mucopolysaccharidosis type II: a nationwide survey in Japan2011

    • 著者名/発表者名
      Tanaka A, Okuyama T, Suzuki Y, Sakai N, Takakura H, Sawada T, Tanaka T, Otomo T, Ohashi T, Wada M, Yabe H, Ohura T, Suzuki N, Kato K, Adachi S, Kobayashi R, Mugishima H, Kato S
    • 学会等名
      Annual Meeting of Society for the Study of Inborn Errors of Metabolism
    • 発表場所
      Geneva, Switzerland
    • 年月日
      2011年8月29日-9月2日
  • [学会発表] ライソゾーム病スクリーニングにおける患者告知および遺伝カウンセリングの経験2011

    • 著者名/発表者名
      田中あけみ,澤田 智,奥山虎之 ,鈴木 健,坂口知子,小田絵里 ,藤 直子 ,藤川研人,斎藤三佳,北川照男
    • 学会等名
      第114回日本小児科学会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2011年8月12-14日
  • [学会発表] Multidisciplinary team approach for management of mucopolysaccharidoses2011

    • 著者名/発表者名
      Akemi Tanaka
    • 学会等名
      2011 Korean Lysosomal Storage Disease Symposium(招待講演)
    • 発表場所
      Seoul, Korea
    • 年月日
      2011年7月8日
  • [学会発表] ライソゾーム病の新生児マス・スクリーニング施行に伴う遺伝カウンセリング2011

    • 著者名/発表者名
      田中あけみ,鈴木 健,奥山虎之 ,藤川研人,坂口知子,小田絵里 ,藤 直子 ,斎藤三佳,澤田 智,北川照男
    • 学会等名
      遺伝医学合同学術集会2011/第35回遺伝カウンセリング学会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      2011年6月16-19日
  • [学会発表] ライソゾーム病スクリーニングとこれにより診断されたムコ多糖症II型の乳児例2011

    • 著者名/発表者名
      田中あけみ、澤田智、奥山虎之
    • 学会等名
      第53回日本小児神経学会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2011年5月26-28日
  • [図書] Neurochemistry of Metabolic Disease2012

    • 著者名/発表者名
      Tomatsu S, Montaño AM, Molano ACS, Roman D, Hintze J, Carvalho CG, Federhen A, Vieira TA, Giugliani R, Węgrzyn G, Tanaka A, Suzuki Y, Orii T
    • 総ページ数
      in press
    • 出版者
      Nova Science Publishers, Inc
  • [図書] 今日の小児治療指針 第15版2011

    • 著者名/発表者名
      田中あけみ
    • 総ページ数
      1001
    • 出版者
      医学書院

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公開日: 2013-07-10  

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