研究課題
ライソゾーム病の神経障害のメカニズムとして、オートファジーの亢進が重要とされている。ライソゾーム病のひとつであるムコ多糖症II型のモデルマウス(IDS-KO)を用いて組織学的に検討し、オートファジーを阻害する薬物投与により神経障害の治療薬開発に結び付けることを目的に研究を行った。生後2日目から8週までのIDS-KOの脳組織につき、ポリユビキチン化タンパク質をオートファゴソームにつなぐp62およびミトコンドリアがオートファジーを受けて現れるSCMASの染色を行ったところ、6週齢より陽性反応を示した。20週齢のIDS-KOの脳組織の電子顕微鏡所見では、大小の空胞が細胞質に充満したミクログリアおよびアストロサイトが脳全体に認められ、ムコ多糖等の蓄積によるオートファジーの亢進によりライソゾームが膨化していると推測された。神経細胞は正常の形態であった。神経細胞の変化は25週齢において初めて認められ、胞体内に淡い渦巻状の封入体が多数出現した。空胞化したミクログリアの数はむしろ減少していた。生後4週齢よりオートファジーの抑制作用があるクロロキンを経口投与し25週齢で観察したところ、異常封入体を持つ神経細胞は存在せず20週齢マウスと似た病期であった。このことから、オートファジーの抑制により病状の進行を遅らせる可能性が推測された。36週齢のIDS-KOを用い、関連物質を免役染色にて検索した。GM3の染色では、IDS-KOの大脳皮質においてミクログリアおよび神経細胞に強い陽性反応を認め、細胞膜変性が推測された。ミトコンドリアの変性を示すTOMも神経細胞で強陽性を示し、オートファジーの亢進が推測された。Ubiquitinはミクログリアで強い陽性を認め、ユビキチン-プロテオソーム系の亢進が推測された。PDIは、正常コントロールマウスと差を認めず、小胞体ストレス反応の亢進は大きくないと推測された。
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Molecular Genetics and Metabolism Reports
巻: 1 ページ: in press