研究課題/領域番号 |
23591513
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
赤坂 真奈美 岩手医科大学, 医学部, 助教 (00405797)
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研究分担者 |
亀井 淳 岩手医科大学, 医学部, 講師 (70275551)
佐々木 真理 岩手医科大学, 医学部, 教授 (80205864)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 7Tesla MRI / 超高解像度核磁気共鳴分光法 / 脳室周囲白質軟化症 / γ-aminobutyric acid / 早産児 / 極低出体重児 / 発達予後 / 点頭てんかん |
研究概要 |
平成23年3月11日に発生した東日本大震災の影響により、7Tesla 超高解像度核磁気共鳴分光法(MRS:magnetic resonance spectroscopy)によるGABA(γ-aminobutyric acid)計測法の確立に大きな支障をきたしている。そのため、平成23年度は先行研究として、当院倫理委員会の承認を得て、当院新生児集中治療室に入院した在胎34週未満の早産児かつ極低出生体重児(出生体重1,500g未満)を対象に、退院前とその後3か月ごとに前方視的な1.5Tesla MRSの撮像および、神経学的評価と乳幼児発達検査を開始した。対象は平成23年8月以降に出生し、家族の同意が得られた20名で、平均出生週数は28.7±2.1週、出生体重は1,073±363gである。このうちわけは、脳室周囲白質軟化症(PVL:periventricular leukomalacia)児が2名、脳内出血が2名、頭部画像に異常がないが、明らかな発達の遅れを認める児が1名、現在のところ画像に異常がなく発達が正常な児が15名である。全例で、安全かつ安定したMRSの撮像が短時間に可能であった。我々が用いているLCモデル併用全自動解析マルチボクセルMRSは、早産児においても安定して撮像ができることが証明された。さらに、平成23年度は、PVLと診断し当院外来で経過観察中の脳性麻痺児で、学童期に達した知的正常かつ独歩可能な2症例に、非鎮静下に、7Tesla MRIの撮像を行った。2症例とも臨床的には軽症なPVLであるが白質異常信号は脳室体部周囲のみならず、前角周囲にまで両側瀰漫性に広がっていた。7Tesla MRIでは慢性期に達した軽症のPVL児の白質異常の広がりの程度の描出に優位性があることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東日本大震災の影響により、7Tesla 超高解像度核磁気共鳴分光法(MRS:magnetic resonance spectroscopy)によるGABA(γ-aminobutyric acid)計測法の確立に大きな支障をきたしており、また同様に震災の影響で3Tesla MRIが故障し、撮像ができなくなったために、研究計画に遅れが生じている。平成23年度は、健康ボランティアを用いた7Tesla MRSによる超高解像度GABA計測法の確立を行った後に、当院外来通院中の脳室周囲白質軟化症(PVL:periventricular leukomalacia)児に3Tesla MRS と7Tesla MRSを行い、周産期情報とともに検討予定であったが実施できなかった。そこで、先行研究として当院倫理委員会の承認を得て、当院新生児集中治療室に入院した在胎34週未満の早産児かつ出生体重1,500g未満の極低出生体重児20名を対象に、既存の1.5Tesla MRSを開始し、3か月ごとにMRSおよび遠城寺式乳幼児発達検査、神経学的評価を開始し、順調にデータを集積中である。また、7Tesla MRIの撮像は可能になったため、まずは安全を最優先に、平成23年度は鎮静を必要としない症例から撮像を開始した。当院外来で経過観察中のPVL児で、知能が正常かつ軽度の痙性麻痺のある、学童期に達した2症例を対象に、MRSの先行研究として7Tesla MRIの撮像を行った。3Tesla MRIが平成24年5月から再稼働するめどがたったため、今後3Tesla MRIを行い比較検討し、7Tesla MRIの優位性を証明する。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、我々既設の1.5Tesla, 3Tesla MRIで行っている自動化技術や、核磁気共鳴分光法(MRS:magnetic resonance spectroscopy)を超高磁場7 Tesla MRIに移植を行う。安定した計測が可能になるよう適正化ができ次第、健康ボランティアを用いてGABA(γ-aminobutyric acid)計測法の確立を目指し、撮像を開始する。脳室周囲白質軟化症(PVL:periventricular leukomalacia)の後遺症を残し、当院外来で経過観察中の学童期に達した痙性麻痺症例を対象に7 Tesla MRIをすでに開始しており、平成24年度は症例を増やす。また平成24年5月から3T MRIの再稼働のめどが立ったため7Tesla MRSの先行研究としてPVL児の3Tesla MRIおよびMRSを開始する。3Tesla MRSでは、撮像したPVL児を知能正常群、精神発達遅滞群、点頭てんかん発症群にわけて比較検討する。先行研究として、平成23年度に行った早産かつ極低出生体重児の新生児集中治療室退院後の3か月ごとの前方視的な1.5Tesla MRS撮像および神経学的評価と発達調査が順調に進んでおり、今年度も継続する。全例が1歳の検査を終わり次第、発達予後、周産期情報とともに、脳内生化学的検査の検討を行い、データを近日中に早急にまとめ、学会発表を行うとともに、論文を仕上げる。また、早産児かつ極低出生体重児の3か月ごとの前方視的な3Tesla MRSを順次開始する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は7T 超高解像度核磁気共鳴分光法(MRS: magnetic resonance spectroscopy)を健康ボランティアに撮像予定であるため、搬送代、および謝金が必要である。脳室周囲白質軟化症児の7T MRIを行うため、患者搬送代およびエックス線フィルム代が必要である。脳室周囲白質軟化症に点頭てんかんを合併した症例の画像診断をまとめたものを、第12回国際小児神経学会で発表するため(共同演者)、オーストラリアへの渡航費を申請した。また平成23年度に行った早産児かつ極低出生体重児の1.5T MRSのデータをまとめて、日本神経放射線学会に発表の予定であるため、学会旅費が必要である。そのデータを英語論文にまとめて投稿予定であるため、データを整理するためのファイル、メモリーカード、プリンターカートリッジ、英語校正・投稿料、別刷り料などを申請した。
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