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2011 年度 実施状況報告書

感染・炎症による脳室周囲白質軟化症の病態と治療に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 23591515
研究機関杏林大学

研究代表者

岡 明  杏林大学, 医学部, 教授 (00251273)

研究分担者 伊藤 雅之  独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, その他部局等, その他 (50243407)
研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード周産期脳障害 / 脳室周囲白質軟化症 / 脳性麻痺
研究概要

脳室周囲白質軟化症(PVL)は今日の脳性麻痺の最も重要な原因であるが、感染・炎症を含む複雑な病態であることが疫学的研究などで示されている。感染によるPVLの機序は明らかでなく、それに対する特異的な治療法もないため、病態の解明と治療法の開発の目的として、我々は感染機転による実験的なPVLモデルを作成した。大腸菌由来のリポ多糖を使用し、胎生期の羊膜腔内あるいは新生仔の腹腔内に注入することにより、胎児期子宮内感染あるいは新生児期敗血症の感染のラットモデルを作成した。こうしたラットの脳を組織学的に検討したところ、ヒトPVLと同様に、脳室周囲の大脳白質に限局したPVL様病変を作成することができた。ヒトで見られる軸索の凝固壊死像や嚢胞形成は認められなかったが、炎症性細胞であるミクログリア/マクロファージが側脳室周囲白質に限局して出現した。また、大脳白質では髄鞘を形成するオリゴデンドロサイトが著明に減少しており、その結果として髄鞘化の障害が認められた。ヒトPVLにおいても、単に壊死による嚢胞形成だけでなく、むしろ幼弱脳における未分化なオリゴデンドロサイトの障害と結果として生じる髄鞘形成異常が病態の重要な側面であることが指摘されてきている。この感染モデルにおける大脳白質障害はこうしたヒトPVLの病態に合致するものと考えられる。これまでPVLの動物モデルは、羊などの大型の動物種では作成されてきていたが、ラットなどの小動物での作成は困難であった。今回ラット感染モデルにおいてヒトPVLと同様のオリゴデンドロサイトの障害が認められており、今後は感染・炎症による白質障害の病態の解析だけでなく、薬剤による予防法、再生に向けた治療的実験などに応用することが可能となった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は、ヒト脳性麻痺の原因として重要なPVLの中でも感染機転に注目して、その病態の解明と治療法の開発を目的としている。我々のこれまでの検討では、まず、感染によって幼弱ラットでは大脳白質障害が選択的に生じており、これはPVLの病態に感染機転が原因となることを動物モデルでも示す所見であった。さらに、白質を構成する細胞であるオリゴデンドロサイトの著明な減少を認めた点でも、ヒトPVLで注目されている幼弱オリゴデンドロサイトの選択的な障害に合致する所見であり、ヒトPVLの病態を解析する上で非常に有用なモデルであることを明らかにすることができた。今後、さらにオリゴデンドロサイト障害の病態の解析および再生治療に向けた実験を行い、最終的な治療法の開発を行う。

今後の研究の推進方策

感染モデルでのオリゴデンドロサイト細胞障害の機序として、リポ多糖の受容体であるToll-Like Receptor4(TLR4)を検討したところ脳室周囲白質に蛋白の発現を認められた。未熟な中枢神経系のTLRの発現と機能についてはこれまで明らかにされておらず、蛋白およびmRNAの発現および、シグナル伝達系の活性化の有無などについて検討する。その上で、オリゴデンドロサイトがTLR4を介して直接的な機序で障害されているかどうかを検討する。これまで培養細胞を用いた実験系では、オリゴデンドロサイトには興奮性アミノ酸のAMPA受容体が発現しており、これを介したExcitotoxicity による細胞障害が起こることが示されている。AMPA受容体阻害剤を用いて、感染モデルにおいてもAMPA受容体を介したExcitotoxicityが関与しているかどうかを検討する。脳虚血実験動物モデルでは、骨髄由来細胞投与にて病変の縮小が認められている。感染によるPVLモデルにおいても、骨髄由来細胞移植によって減少したオリゴデンドロサイトの代償と髄鞘化の改善が認められるかどうかを評価検討する。

次年度の研究費の使用計画

以下の動物実験を行い解析を進める。(1)ラットでの感染モデルについて、オリゴデンドロサイトの細胞障害の機序を解析するために、オリゴデンドロサイトの分化段階のマーカー(O4、O1等)を用いて、解析を行い、細胞の分化の感受性と障害の関連性を検討する。(2)リポ多糖の受容体であるTLR4について、未熟脳でのタンパクおよびmRNAの発現を解析し、病態との関連を検討する。(3)興奮性アミノ酸によるExcitotoxicityを介したオリゴデンドロサイト障害の関与について、AMPA受容体阻害剤を用いて、感染による細胞障害が予防されるかどうかを検討する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2011

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Interstitial deletion of 13q14.13-q32.3 presenting with Arima syndrome and bilateral retinoblastoma.2011

    • 著者名/発表者名
      1.Takahashi K, Oka A, Mizuguchi M, Saitoh M, Takita J, Sato A, Mimaki M, Kato M, Ogawa S, Igarashi T.
    • 雑誌名

      Brain Dev

      巻: 33 ページ: 353-6

    • DOI

      10.1016/j.braindev.2010.06.014

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Japanese Congenital Cytomegalovirus Study Group. Screening for congenital cytomegalovirus infection using newborn urine samples collected on filter paper: feasibility and outcomes from a multicentre study.2011

    • 著者名/発表者名
      .Koyano S, Inoue N, Oka A, Moriuchi H, Asano K, Ito Y, Yamada H, Yoshikawa T, Suzutani T;
    • 雑誌名

      BMJ Open

      巻: 1 ページ: e000118

    • DOI

      10.1136/bmjopen-2011-000118

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 脳室周囲白質軟化症2011

    • 著者名/発表者名
      岡明
    • 雑誌名

      Fetal & Neonatal Medicine

      巻: 3 ページ: :5-6

  • [雑誌論文] 頭部MRI2011

    • 著者名/発表者名
      岡明
    • 雑誌名

      周産期医学

      巻: 41 ページ: 1441-1445

  • [図書] 先天性サイトメガロウイルス感染症の現状と臨床像 小児神経学の進歩 第40集2011

    • 著者名/発表者名
      岡明
    • 総ページ数
      121-128
    • 出版者
      診断と治療社

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公開日: 2013-07-10  

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