研究課題
今年度は、主に急性脳炎・脳症における自己免疫の関与について、イムノブロットを用いて検討を行った。市販のヒト脳組織由来のタンパクを電気泳動したメンブレンを用い、50倍に希釈した患児の血清を反応させた。二次抗体として抗ヒトIgG兎血清を用いてBiotin-Streptoavidin法にて染色し、脳組織と結合するγグロブリンの有無を解析した。その結果、ヒト脳組織切片を用いた免疫染色によって自己免疫性脳炎と診断した症例の約30%で、脳組織と結合するγグロブリンの存在を認めた。この結果は、イムノブロット法は感度は相対的に低い可能性はあるが安価で再現性は高く、自己免疫性脳炎のスクリーニング法の一つとなりえることが示された。また、多くの陽性例では複数のバンドが染色され、抗体がポリクローナルである可能性が示唆された。さらに、陽性例ではジストニアや舞踏病などの不随意運動が顕著な症例が多く、このような特徴を持つ症例でより有用な可能性が考えられた。今後は分子量から抗体が認識するエピトープの同定を試みる予定である。また、引き続きヒト脳組織切片を利用した免疫染色との比較を行うとともに、ラット脳組織切片を用いた免疫染色やDalmauらの報告によるcell-based assayを導入し、さまざまな方法による自己抗体の検出を試みることを予定している。一方、末梢血リンパ球を用い亜t刺激試験について解析条件の設定のための予備実験を施行しており、条件設定が終了した時点で遠隔期の検体を用いた刺激試験を施行する予定である。
2: おおむね順調に進展している
正常対照脳を用いた免疫組織染色による自己抗体の検出およびイムノブロットによる自己抗体の検出に成功し、自己抗体陽性の急性脳炎・脳症の特徴を把握することができたので、今年度の目標は概ねクリアできたと考える。この結果を発展させるためのさらなる解析方法についても概ね準備ができており、平成25年度には更なる成果が出ることが期待される。
自己抗体については、ウエスタンブロットによる解析と特異的な抗神経抗体の測定とを組み合わせて研究し、平成23年度の結果をさらに発展させる。また、自然免疫の解析のための刺激試験の方法を確立し、遠隔期の検体を用いた検討を行う。
平成24年度は研究の進捗は順調であったが、試薬などが予想より安価に入手できたため若干の研究費が未執行となった。平成25年度の研究はより高価な試薬を使用する予定があり、研究費はすべて執行される見通しである
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すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 3件)
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