研究課題
今年度は急性脳炎・脳症における自己免疫の関与について、様々な方法を組み合わせて検討を行った。対象とした症例は、精神症状や難治のけいれんなどの神経症状を有し、臨床経過などから自己免疫性機序の関与が強く疑われた16例である。これらの症例について、以下の3つの方法で自己抗体の検出を試みた。1.ヒト脳組織抽出蛋白メンブレンを用いたimmunoblot(IB)、2.ラット脳組織に対する免疫組織化学染色法(ラットIHC)、3.ヒト脳組織に対する免疫組織化学染色法(ヒトIHC)。16例中15例でいずれかの方法により抗神経抗体の存在が示唆された。IBでは5症例に過剰なバンドを認めた。うち4症例では複数のバンドを認めた。ラットIHCでは11例で染色を認めた。染色された構造は、核8例・ニューロピル4例・細胞体2例であった。ヒトIHCでは10例で染色を認めた。染色された部位は症例によって様々であった。今年度の研究結果は、自己免疫性脳炎の診断においては、複数の抗神経抗体測定法を組み合わせて総合的に判断する必要があることを強く示唆する。IBは感度がIHCに比べて低いことが示唆され、抗神経抗体のスクリーニングには適さないと考えられた。IHCは比較的感度が高く、信頼性がある測定法と思われた。しかし、組織の固定の過程で抗原性が失われる可能性があり、感度が低下する可能性がある。また今回の検討では、ラットの標本とヒトの標本とを用いた場合で結果が一致しなかった。したがってIHCを用いる場合に複数の動物種を用いることが妥当であると思われた。一方、末梢血リンパ球を用いた刺激試験について解析条件の設定のための予備実験を施行したが、適切な条件の設定が困難であり今後解決すべき課題と思われる。
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