研究概要 |
動物モデルも用いた検討:Galanin-like peptide (GALP)は摂食行動調節作用を有する新規の神経ペプチドで、下垂体後葉(PP)でのGALPは浸透圧調節や下垂体後葉ホルモン分泌に関与すると考えられている。今回我々は母乳制限および母乳再投与が遺伝子発現に与える影響をRT-PCRで検討した。GALP遺伝子の発現は24時間の母乳制限で有意に増加、再投与で有意に低下した。GALPは生後発達過程の早期から浸透圧調節や下垂体後葉ホルモン分泌に関与することが示唆された。次にラット視床下部Nesfatin-1遺伝子の発現に母仔分離母乳制限が与える影響をin situ ハイブリダイゼーション法を用い検討した。Nesfatin-1は脳脂肪細胞系の一因で新規の摂食抑制蛋白である。Nesfatin-1遺伝子の発現は24時間の母乳制限によって有意に増加し、生後発達過程の早期から摂食調節に関与する可能性が示唆された。 肥満小児を用いた検討:脳由来神経栄養因子(BDNF)は脳・末梢連関の一つで摂食抑制やエネルギー代謝亢進作用を有する。小児肥満の発症、進展との関連性、出生時の栄養状態との関連を検討した。血中BDNFレベルは、高度肥満児で、非肥満および軽中等度肥満より有意に低値、メタボリックシンドローム(MS)児はさらに低値であった。肥満度および出生体重との関連があり、小児肥満発症・進展における重要性が示唆された。次に小児MS児の25(OH) VitD濃度と肥満関連因子との関連性を検討した。肥満児16名(男:女=6:10、6歳1か月-17歳9か月)中7名はMSの基準を満たした。25(OH) VitDはMS群で有意に低下、VitD欠乏の頻度は、MS群で有意に多かった。単変量解析で血清25(OH)D濃度はPTH, BMI, 腹囲, 尿酸と負の相関を認めた。ビタミンD低下は小児において肥満の病態進展に関与している可能性が考えられた。
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