研究課題/領域番号 |
23591521
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
林 雅晴 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, 副参事研究員 (00280777)
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キーワード | 医療・福祉 / 臨床 / 脳・神経 / 病理学 / 生体試料 / 発達障害 / 難治てんかん / 脳症 |
研究概要 |
小児期発症難治てんかんのてんかん原性の形成機序を解明し、新規治療法の開発に寄与することを目的に、病理材料での組織化学的解析と患者髄液での解析を並行して進めた。 (1).剖検脳でのイオンチャンネルに関する免疫組織化学的解析: West症候群(WS)で発症しLennox症候群(LGS)に移行した仮死後遺症(HIE)と滑脳症の大脳辺縁系で市販の抗体を用いてNav1.1表出を検討し、2012年10月第46回日本てんかん学会で発表した。さらに進行性ミオクローヌスてんかん(PME)の病因として重要な歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)の剖検例でNav1.1表出を検討したが、PME既往との関係を見出せなかった。以前、DRPLAでPME発症での関与を解明した酸化ストレスとの関連で注目されているautophagyに関する解析を開始した。 (2). WS乳児での髄液中アセチルコリン、神経ペプチド、モノアミン代謝物のHPLC測定結果をまとめた英文論文がISRN Neurologyで出版された。 (3).亜急性または再発・再燃を示すてんかん性脳症の病態解明: 急性期・回復期の患者(17例)血清による対照脳切片での平成24年度の免疫組織化学的解析結果をオーストラリアで開催された国際小児神経学会議(第12回)・アジア大洋州小児神経学会議(第11回)合同会議で発表した。免疫組織化学染色を17例から30例に増やして進め、加えて市販の脳抗原添加メンブレインでのimmunoblottingも行った。免疫染色陽性の19例中7例で陽性バンドを認めた。さらに免疫染色結果の一部をBrain Dev(Epub)に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、従前の基盤研究 (C) (2) 145707929「進行性ミオクローヌスてんかん発症機構に関する神経病理学的検討」、17591129「難治性てんかんの治療法開発のための神経病理学的検討」、20591238「急性・慢性の小児神経疾患における難治性てんかん形成機序の解明」での研究成果を発展させ、病理材料での組織化学的解析と患者髄液での解析を並行して進めることにより、小児期発症難治てんかんのてんかん原性の形成機序を解明し新規治療法の開発に寄与するため、企画された。 てんかん原性におけるナトリウムチャンネルの関与を明らかにするため、剖検脳でのイオンチャンネルに関する免疫組織化学的解析を行い、難治てんかん(West症候群、Lennox-Gastaut症候群、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症)の既往を有する剖検脳の大脳辺縁系でナトリウムチャンネルの表出異常を、世界で初めて明らかにし、難治てんかんでのイオンチャンネル発現異常の可能性を指摘した。さらに酸化ストレスとの関連でautophagyに関する解析を開始した。同時にWest症候群を含む難治けいれん患者の髄液でHPLCによるアセチルコリン、神経ペプチド、モノアミン代謝物の測定も進めている。 一方、急性脳炎・脳症での難治てんかん発症機序を解明し、てんかん発作難治化の予防に貢献するため、日本で数多く報告されている亜急性のてんかん性脳症において、患者血清による抗神経抗体スクリーニングと髄液をヒト対照脳での免疫組織化学染色とimmunoblottingを用いて進め、症例報告を英文論文として発表した。
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今後の研究の推進方策 |
以下の(1)~(3)の研究テーマを継続して進める。 (1).剖検脳での免疫組織化学的解析では、ナトリウムチャンネルNav1.1の表出の検討に加えて、平成24年度DRPLA剖検例で試験的に行ったautophagy研究を本格化させる。先ず進行性ミオクローヌスてんかん(PME)を来すDRPLA以外の神経セロイドリポフスチン症、Lafora病の剖検例の大脳辺縁系切片でNav1.1の表出を検討する。West症候群、Lennox-Gastaut症候の剖検脳において、パラフィン固定ヒト脳組織での機能が確立している市販のLC3・p62抗体を用いて検討を行い、autophagyに関する解析も試みる。 (2).難治てんかんにおけるアセチルコリン、神経ペプチド、モノアミン神経異常の解明では、背景疾患の種類ならびに対象数を増やして髄液での検討を進め、WS乳児の髄液で見出した異常の特異性を検証する。剖検脳での免疫組織化学的解析も継続して行う。 (3).亜急性または再発・再燃を示すてんかん性脳症の病態解明では症例数を増やすとともに、免疫組織化学染色またはimmunoblottingで脳抗原と結合する免疫グロブリンの存在が確認された患者の血清において、既存の抗神経抗体であるNMDAR抗体、GAD抗体、VGKC抗体、GABAR抗体をcell-based assay、ELISA、radioimmunoassayを用いて定量し、免疫組織化学染色またはimmunoblottingとの関連を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度と同様に、以下の(1)~(3)の研究テーマを継続して進める。 (1).イオンチャンネルとAutophagyに関する解析: 進行性ミオクローヌスてんかん(PME)を来すDRPLA以外の神経セロイドリポフスチン症、Lafora病の剖検例の大脳辺縁系切片において、Nav1.1の表出を検討しDRPLAでの解析結果と比較する。West症候群、Lennox-Gastaut症候の剖検脳において、autophagy の病理学的マーカーであるLC3・p62に対する免疫組織化学染色を行い、DRPLAでの解析結果と比較するとともに、酸化ストレスとの関連も追及する。 (2).難治てんかんにおけるアセチルコリン、神経ペプチド、モノアミン神経異常の解明では、対象とする疾患数ならびに患者数を増やして髄液での検討を進め、WS乳児髄液での異常の特異性を検証する。同時に、West症候群既往例、DRPLA・NCL例において、大脳皮質、海馬でのグルタミン酸トランスポーター、大脳基底核、脳幹でのカテコラミン・セロトニン神経に関する免疫染色を行い、髄液での解析結果との関連を追究する。 (3).亜急性てんかん性脳症の解明: 免疫組織化学染色・immunoblottingが陽性だった患者の血清において、抗神経抗体(NMDAR抗体、GAD抗体、VGKC抗体、GABAR抗体など)をcell-based assay、ELISA、radioimmunoassayを用いて定量し、免疫組織化学染色またはimmunoblottingとの関連を明らかにする。
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