研究課題/領域番号 |
23591522
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研究機関 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
佐久間 啓 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所免疫研究部, 流動研究員 (50425683)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ミクログリア / トランスクリプトーム解析 |
研究概要 |
ミクログリアの活性化や分化に関与する因子を同定するため,マイクロアレイによるトランスクリプトーム解析を行った.C57BL/6マウスに実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を誘導し,急性期および回復期の脳・脊髄を採取した.これらからフローサイトメトリー法でミクログリアを単離し,RNAを抽出してマイクロアレイを行った.同様にcuprizone経口投与による脱髄モデルを誘導し,脳からミクログリアを単離した.これらを正常脳・脊髄のミクログリアと比較検討した.さらに脾臓および腹腔内のマクロファージを単離し,ミクログリアとの間の比較も行った.その結果,EAEの脊髄ではMHC分子などの炎症関連分子のほかに,いくつかの共通の機能を持つ因子群の発現が上昇していた.これらにはI型インターフェロン誘導因子,脂質代謝関連分子などが含まれ,またいくつかの機能未知の分子も同定された.一方でマクロファージと比較してミクログリアで特異的に発現が高い因子もいくつか同定され,この中にも機能未知の分子が含まれていた.これらの結果は定量PCR法によっても裏付けられた.ミクログリアの増殖にはマクロファージの成長因子であるM-CSFが重要であるが,M-CSFと受容体を共有する新規サイトカインinterleukin 34(IL-34)もミクログリアを増殖させることが知られている.我々はアストロサイトとの共培養により骨髄細胞からミクログリアを誘導する培養系を用いて,IL-34がミクログリアの増殖だけでなくその分化にも重要であることを証明した.IL-34で誘導した細胞はよりミクログリアに近い形態と機能を獲得した.神経細胞とアストロサイトはIL-34を産生しており,IL-34が中枢神経系におけるミクログリアの分化に重要であることが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トランスクリプトーム解析により,当初の計画通りミクログリアの活性化や分化に重要と考えられる候補分子を複数同定することができた.
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今後の研究の推進方策 |
トランスクリプトーム解析により同定されたミクログリアの活性化や分化に重要と考えられる因子の中で,機能未知の因子に焦点を当てて機能解析を行う.In vitroで様々な条件下でミクログリアを培養してこれらの因子の発現を確認する.またsiRNAによるノックダウンや抗体による阻害を行ってミクログリアの形態や機能に与える影響を調べる.具体的には定量的 PCR,フローサイトメトリー法や免疫組織化学法による表面分子の解析,サイトカイン産生能,貪食能・遊走能などである.同時にミクログリア培養細胞にこれらの因子を強制発現させるという方法も考えられる.これらの方法でさらに候補分子を絞り込んだ後に,in vivoにおける検証を行う.具体的には抗体投与やatelocollagenを用いたin vivo siRNA等の方法を考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
備品として,脳内(髄腔内)への抗体やsiRNA投与のために,マウス固定装置,微量注射器,マイクロドリル,微量持続注入ポンプなどが新たに必要となる.消耗品として,実験動物,細胞培養関連物品,阻害実験・フローサイトメトリー・免疫組織化学用の抗体,RNA抽出・逆転写反応・定量PCR用reagent,ELISA等各種アッセイキット,細胞磁気分離用ビーズ,オーダーメイドsiRNA,atelocollagenなどが必要となる.本研究の成果の一部を学会ならびに論文発表するための国内・国外旅費,論文投稿関連費用の計上を予定している.
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