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2013 年度 実施状況報告書

中枢神経疾患動物モデルにおけるミクログリアのトランスクリプトーム解析

研究課題

研究課題/領域番号 23591522
研究機関公益財団法人東京都医学総合研究所

研究代表者

佐久間 啓  公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, 主席研究員 (50425683)

キーワードミクログリア
研究概要

ミクログリアの発生と分化に関与する新たな因子を同定するために,成体マウス脳よりミクログリアを単離してRNAを抽出し,トランスクリプトーム解析を行った.その結果,マクロファージと比較してミクログリア特異的に高発現する因子をいくつか見いだした.この中で,その機能が十分解明されておらず注目に値する因子として,EBF3を抽出した.EBF3は転写因子の一つであり,同じファミリーに属するEBF1はB細胞の成熟に必須の因子であることが知られている.EBF3に関しては中枢神経系の発生に関与することは知られているが,ミクログリアにおける機能については解明されていない.
そこでマウスアストロサイト上で骨髄未分化細胞を共培養してミクログリアへ分化誘導する実験系を用いて,EBF3がミクログリアの分化へ及ぼす影響を調べた.共培養開始と同時にEBF3 siRNAを投与したところ,ミクログリアにおけるEBF3は1/4程度に抑制された.骨髄未分化細胞より誘導されるミクログリアはEBF3 siRNA投与により有意に増加した.表面マーカー解析からこれらの細胞はミクログリアとしての基本的な性質を保っており,M2マクロファージのマーカーであるCD206の発現がわずかに低下していたものの,多くの表面分子の発現に変化は認められなかった.
またMOGペプチドによって誘導された実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)のマウスで,ミクログリアにおけるEBF3の発現が上昇していた.そこでEAEにおけるEBF3の役割を明らかにするため,EAEを誘導したマウスにEBF3 siRNAをin vivoで投与して臨床症状を観察した.その結果,EBF3 siRNAを投与したマウスではEAEが重症化する傾向が認められた.しかしマウスから単離したミクログリアにおけるEBF3の発現は低下していなかった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

マクロファージと比較してミクログリアに特異的に高発現する機能未知の因子EBF3を同定し,siRNAを用いてミクログリア分化誘導系ならびに実験的自己免疫性脳脊髄炎に及ぼす影響を解析した.これらは,ミクログリアのトランスクリプトーム解析の当初の計画通りであり,EBF3の機能解析という課題は残されているものの発生・分化に及ぼす影響をある程度解明することができた.

今後の研究の推進方策

現在行っているEBF3の機能解析をさらに進める.すなわち転写因子であるEBF3によって制御される因子に着目し,同じくsiRNAノックダウンを用いて検討を行う.またこれまで解析を行ってきたミクログリア分化誘導因子:インターロイキン(IL-)34に関しても,IL-34の存在化で分化誘導したミクログリアの性質をさらに詳細に解析し,特にミクログリアが持つ抗炎症性のフェノタイプの形成にどのような役割を果たすかに注目する.また同じくミクログリアの機能に影響を及ぼすTGFβとIL-34の相互作用についても検討する.

次年度の研究費の使用計画

研究代表者は平成24年4月より所属が変更となり,新所属先で新たに研究室を立ち上げたが,研究が軌道に乗るまでに約1年間を要し,この間は研究の進捗が遅れざるを得なかった.平成25年度に本格的に研究を再開した後はミクログリアの機能調節に関する新たな興味深いデータが次々と得られ,裏付けを得るために更なる追加実験が必要となった.このため当初の目的を完遂するためには1年間の研究機関の延長が必要と考えた.
研究に必要な基盤は概ね整っているので,延長期間中に必要となる経費の多くは試薬・消耗品に占められる.具体的には分子生物学的解析に必要な試薬・キット製品や細胞培養に必要な培地・消耗品等を中心として約80万円を見込んでいる.また新たに得られた知見を平成26年11月の国際神経免疫学会(マインツ・ドイツ)で発表する予定であり,旅費として約20万円を計上する.

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公開日: 2015-05-28  

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