研究課題
ニューログリカンC(NeuroglycanC)はスパインに局在するコンドロイチン硫酸プロテオグリカンでコカインやメタンフェタミンで発現量が上昇するという報告がある。また、ノックアウトマウスの解析から、 ニューログリカンC はプレシナプスの機能に関与することが示唆されている。一方で、我々はニューログリカンCが繊維芽細胞増殖因子FGFファミリー分子の一つであるbFGFと結合することを見出していたので、FGFファミリーの他の分子との結合に関して検討を行った。その結果、ニューログリカンCと結合できないFGF分子と結合するFGF分子に分類できることが分かった。また、一部のFGFは軸索終末にシナプス小胞の誘導を促進することが報告されているので、向精神薬の投与による薬物依存の成立に関与する可能性が示唆される。そこで、メタンフェタミンの投与で、これらのFGFの発現量が変化する可能性に関して検討を加えた。向精神薬であるメタンフェタミンを投与したラットとコントロールの生理食塩水を投与したラットから24時間、72時間後に脳を取り出して脳の各領域(前頭前野、側坐核、線条体、海馬、腹側被蓋野、大脳皮質視覚野)ごとにRNAを抽出し、繊維芽細胞増殖因子FGFファミリーの分子やニューログリカンCの発現量を測定した。その結果、ニューログリカンCが特定の神経核で発現量が増加していることを認めた。ただし、先行実験に比べ発現の上昇が早めに起きていた。また、幾つかの種類のFGFも扁桃体や側坐核で上昇していることを見いだした。
3: やや遅れている
当初の予定では軸索へのシナプス小胞の誘導に関して検討を加える予定であったが、ポジティブコントロール実験として行ったFGF22のグルタミン酸小胞の誘導が上手く再現できなかったためメタンフェタミンで誘導されるFGFによるシナプス形成への影響に関する評価が上手く進んでいない。これまでのところGABA小胞の誘導が細胞培養の培地へのFGF7の添加で起きることは再現できたので、ニューログリカンC結合型FGFで誘導活性を調べたが、GABA小胞の誘導は見られなかった。しかしながら、特定の神経核でGABA小胞の誘導活性のあるFGFの発現量が増加していることを見いだした。この結果は、向精神薬による神経回路の変化と薬物依存の成立に関して分子的な理解を深める鍵となる可能性がある。
今回の結果から報償系の神経回路形成にFGFが関与する可能性が示された。さらに、スパインに局在するニューログリカンCは特定のFGFと結合することから、産生されたFGFの中でNGCに結合する特定のFGFのみがスパインに濃縮されると考えられる。その結果として特定の神経回路が強化され、薬物依存の成立に関与する可能性が示唆されたが、その検証が必要である。神経回路はグルタミン酸シナプス、GABAシナプスのみではなく、モノアミンシナプスやペプチド性シナプスも存在する。これらのシナプスの形成にニューログリカンC結合型FGFが関与する可能性に関して検証していく。また、特定のFGFのシグナルを阻害することにより薬物依存の成立が変化する可能性に関して検討したい。
当初計画していた増殖因子によるシナプス形成の促進効果が一部測定できなかったため。試薬類、動物飼育(含む人件費)、学会旅費(国内2泊)
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