研究課題/領域番号 |
23591526
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター(研究所) |
研究代表者 |
川井 正信(カワイマサノブ) 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター(研究所), その他部局等, 研究員 (50598117)
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キーワード | 胎児期プログラミング / 概日リズム |
研究概要 |
平成24年度は、平成23年度に確立した胎仔期過栄養モデルを解析を更に進めていった。 マウス胎仔期過栄養モデルは、離乳後(日齢21日)から通常食(STD:脂肪含有量10%kcal)あるいは高脂肪食(HFD:脂肪含有量60%kcal)下で飼育したメスマウスを妊娠させ、離乳まで高脂肪食を食餌させることで作成した。平成24年度は、平成23年度に確認した表現型の再現性を確認した。6カ月時点での脂肪量を検討したところ、皮下脂肪量には両群間で差を認めなかったが、オス、メスともにHFD群ではSTD群に比べて内臓脂肪量が増加していた。糖負荷試験.インスリン負荷試験を行いインスリン感受性を検討したところ、HFD群では耐糖能の低下・インスリン感受性の低下を認めた。これらの結果から、胎仔期の過栄養は、脂肪組織のプログラミングを引き起こすことで、インスリン感受性低下の原因になると考え、脂肪組織の表現型のさらなる解析を行った。近年、白色脂肪組織の褐色脂肪細胞化が、全身のエネルギー代謝において重要な役割を果たしていることが注目されているため、白色脂肪細胞の褐色脂肪細胞をこれらのモデルで検討することとした。そこで、褐色脂肪細胞化に関与する遺伝子群(UCP1,Ppargc1a,PRDM16など)の発現を検討するために、定量PCRの系の構築を行った。今後は、胎仔期過栄養モデルマウスの白色脂肪組織におけるこれらの遺伝子群の発現を検討し、白色脂肪細胞の褐色細胞脂肪細胞としての機能獲得に胎仔期の過栄養が影響を与えているかどうか検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胎児期過栄養モデルの確立ができ、解析に必要な十分量のマウスを得られる目処がついたことがその理由に挙げられる。更に、解析のツールが準備できた点などもおおむね順調に進んでいる理由に挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、胎児期過栄養モデルマウスの脂肪組織における白色脂肪細胞の褐色化にかかわる遺伝子(UCP1,Ppargc1a,PRDM16など)の発現を検討する。白色脂肪組織の褐色化に関わる遺伝子発現に変化を認めた場合は、発現が減少していることが予想される。そこで、これらの遺伝子変化の代謝における意味を検討する。白色脂肪細胞における褐色化にかかわる遺伝子発現の減少は、白色脂肪組織でのインスリン感受性を減弱させ、結果胎児期過栄養マウスで認めたインスリン抵抗性につながっている可能性が考えられる。ただ、通常の飼育状態では白色脂肪の褐色化を組織レベルで差を確認することは難しい(免疫染色などによるUCP-1の発現誘導など)ため、胎児期過栄養モデルマウスにβアドレナリン受容体作動薬による刺激を与え、白色脂肪の褐色化を誘導する。そして、これらの遺伝子の発現誘導やUCP-1の免疫染色の染色レベルをコントロールマウスにおけるものと比較することで、胎児期過栄養モデルにおける白色脂肪細胞の機能異常の検討を行っていく。 また、当初の予定通り、胎児期過栄養モデルマウスにおける概日リズムを検討する。成獣における高脂肪食投与は概日リズムに変動をきたすことが知られているため、胎児期過栄養モデルマウスにおける代謝に関与する遺伝子発現の概日リズムを検討する。方法は、6時間毎に採取した組織(脂肪組織・骨など)を用いて、上記の遺伝子発現に加え、Ppargなどのの概日リズムを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
マウスの維持管理費、分子生物学的解析(定量PCRなど)の費用に使用する。 また、成果の公表のための学会参加費・論文作成費にも使用する。 解析機器は十分そろっているため、新たな機器の購入は必要としない。
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