研究課題/領域番号 |
23591529
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
鈴木 洋一 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80216457)
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研究分担者 |
下条 直樹 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40221303)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | アレルギー / 出生コホート / 臍帯 / 線維芽細胞 / エピジェネティクス / ビオチン |
研究概要 |
本研究の主要な目標は以下の3点である。(1)出生コホートを対象として、臍帯由来間葉系細胞のサイトカインなどの発現およびそれらの遺伝子のエピジェネティックな変化と1歳の児の感作、アトピー性皮膚炎、喘鳴との関連を明らかにする。(2)臍帯由来間葉系細胞の遺伝子発現、エピジェネティクスと妊娠中の母親の生活環境要因ならびにアトピー素因の関連を明らかにする。(3)臍帯由来間葉系細胞とホロカルボキシラーゼ合成酵素(HLCS)欠損細胞においてヒストンのメチル化とビオチン化の相互の関係を調べ、HLCSのヒストン修飾への役割を明らかにする。(1)のコホート参加者のリクルートについては、平成23年度末までに、278例のエントリーをおこなった。6ヶ月に達した者196名、1歳に達した参加者は93例となっている。参加者のうち臍帯からの細胞を保存できたものは、203例である。臍帯由来細胞の実験については、計画にはなかったが、より生理的な反応を見たいと考え、細胞へRSウイルス、ライノウイルス、パラインフルエンザを感染させた場合の、各種サイトカイン、ケモカインの測定を行うことにした。この実験は、国立感染症研究所の木村博一先生、群馬県衛生環境研究所の吉住正和との共同研究として行っている。(2)については、ゲノムワイドで関連が見つかってきて、いまだ病態生理との関連が明らかでない遺伝子を中心に解析している。(3)については、最近、細胞の全ヒストンタンパクあたりのビオチン化の程度が0.001%以下であることが分かり、アセチル化、メチル化と関連している可能性は否定的となり、ヒストンビオチン化とアレルギー疾患と関連を示す遺伝子を見出すことが困難であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)対象者のリクルートとサンプリング:当初の予定では、平成23年度末までに200例としていたが、それを上回るエントリーがあった。当初の計画に含まれていなかった、家のほこりの採取を行う事とした。(2)臍帯の採取:参加者の臍帯を採取した。一部はDNA、RNAの採取用にそのまま凍結、一部は、線維芽細胞株の樹立のための処理を行った。241検体について組織を保存できた。細胞株としては、203株が保存できた。(3)アンケート調査:参加者に対して、計画にしたがって行っている。6ヶ月児の196名中、湿疹37名、アトピー性皮膚炎(疑い例含む、以下同)18名、食物アレルギー4名、喘鳴16名、喘息0名、1歳児の93名中、湿疹19名、アトピー性皮膚炎16例、食物アレルギー13例、喘鳴10名、喘息7名という診断となっている。 (4)臍帯由来間葉系細胞における遺伝子発現解析:当初の計画では、IL1β刺激、ポリIC刺激、病原体関連分子による遺伝子発現の解析を行う予定であったが、実際の生きたウイルスで刺激する系の方が意義があるとの判断で、国立感染症研究所の木村博一先生、群馬県衛生環境研究所の吉住正和との共同研究をおこなうこととした。RSウイルス。ライノウイルス、パラインフルエンザウイルスの感染実験を開始した。(5)ヒストンの修飾の解析:ヒストンのビオチン化の解析を行っていたが、Nebraska大学の解析の状況が入り、ビオチン化ヒストンは生理的現象と思われるがその量は非常にわずかであるとのことで、解析が非常に難しく、疾患との関連、ヒストンの他の修飾との関連の可能性も低いことが推定されたため、詳しい解析は行わないこととした。(6)参加者の家のほこり調査:参加者へ、掃除機を送付し、布団のほこりを回収、シャーレを室内に放置し落下してきたほこりを回収し、参加者の家のダニ抗原、食物抗原の濃度を測定することとした。
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今後の研究の推進方策 |
(1)対象者のリクルートとサンプリング:コホートのリクルートに関しては、エントリーは23年度で終了し、24年度に、1歳時点でのアウトカムの判断が200例を超えることが予想される。一歳時点で、湿疹、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー等の発症状況を集計する。(2)臍帯由来細胞の解析:平成24年度は、細胞へのウイルス刺激による、各種サイトカイン、ケモカインの測定、ゲノムワイド相関解析から見いだされてきた遺伝子群(ORMDL3/GSDML、IL18R1、IL33、IL2RB、SLCA22A5、RORA、CYFIP2など)、これまでの我々の研究から有望と思われるマトリックスメタロプロテアーゼ遺伝子群の発現の解析を集中的に行う。(3)ほこり調査:ほこり中のダニ抗原とアレルギー疾患の発症との関連を調べる。フィラグリン遺伝子の影響を調べる。(4)アウトカムと遺伝子発現との関連の解析:一歳時点での疾患の有無と臍帯細胞での非刺激時、ウイルス感染時の遺伝子発現との関連がないかどうか検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の予算は、主に臍帯由来細胞における、サイトカインを初めとする複数の遺伝子の発現をmRNAレベルで検討するため、細胞培養とリアルタイムPCRのための試薬が中心となる予定である。また、ほこり中の食物アレルゲンの測定用の試薬も購入する必要がある。
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