研究課題/領域番号 |
23591531
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
小泉 晶一 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 教授 (50019973)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ヘムオキシゲナーゼ / ヘムオキシゲナーゼ1欠損症 / 炎症 / 血管炎 |
研究概要 |
ヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)はヘムを一酸化炭素(CO)とビリルビンとフェリチン(Feより誘導される)に代謝する律則酵素であるが、われわれは世界で初めて「ヒトHO-1欠損」症例 を発見した。それによりHO-1酵素が生命の発生、生体の発育、恒常性維持に極めて重要な物質であることが知れた。しかしその後第2例目の発見は報告されず、1例のみの臨床病態からはHO-1欠損症の本質はつかみがたい状態であった。しかるに、われわれの第1例発見から十年余を経てようやく第2例目が発見報告された。(Radhakrishnan N, et al.2011) この症例は無脾症であることなど第1例目と臨床症状に類似性が高い。第2例目ではわれわれも遺伝子解析で協力し、エクソン2(R44X)のミスセンス変異がホモでみられストップコドンとなっていることが明らかとなった。この例は軽症で15歳を超えて比較的元気で生存おり、これは遺伝子変異箇所の違いによるのかもしれない。HO-1欠損症の報告が2例となったことで、本症の臨床病態像がより詳細に認識できるようになったのみならず、HO-1の機能的本質の解明にさらに一歩近づいた。加えて今年度は、若年性関節リウマチに合併した、マクロファージ活性化症候群において、HO-1がその疾患の重症度を表現していることを明らかにし、バイオマーカーとしての有用性を実証した。また、腎生検によらずに、尿沈査におけるHO-1発現を見ることで、腎疾患の重症度が推定できる可能性がでてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
待望のヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)欠損症の第2例目がインドで発見され、報告された。この症例は報告前にわれわれに連絡があり、共同で遺伝子検索を実施した。われわれの第1例目とは遺伝子の異常個所が異なり、それが症状の違いに表現されている可能性が高いと思われる。複数例によってHO-1欠損症の臨床像や病態がより詳しく知れるようになり、HO-1の機能的本質に一歩近づいた。全身性炎症疾患や腎障害、血管炎などにおけるHO-1の関与に関する研究も進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き第3例目、第4例目の発見に向けて、世界中の研究者や臨床家とのコミュケーションを密にしていきたい。複数の症例を集積することにより初めてその臨床像や病態がより詳細に認識され、HO-1の機能的本質が明らかになるので、今後もスクリーニングを継続する。腎生検によらずに、尿沈査におけるHO-1発現を見ることで、腎疾患の重症度が推定できる可能性がでてきたので、この方面の研究を発展させる。全身性感染免疫疾患におけるHO-1の関与を継続して検索する。造血細胞移植の経過中のHO-1の役割に関する研究も推進する。以上から、HO-1の造血系および感染免疫系調節機構における生理的重要性を追求する。
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次年度の研究費の使用計画 |
すべて消耗品であるが、スクリーニング用のモノクローナル抗体、その他の試薬と細胞培養用品、および移植実験に使用するマウスの購入が主なものである。
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