研究課題
これまで、T細胞へのキメラ抗原受容体(CAR)の導入にはレトロウイルスもしくはレンチウイルスベクターが用いられてきた。また、CAR遺伝子改変T細胞の体外増幅には通常、動物血清や腫瘍細胞株が用いられる。それに対し、本研究ではpiggyBacトランスポゾン技術とヌクレオフェクション技術を併用することによって、CAR遺伝子を非ウイルス的に簡便且つ安全にT細胞に導入する方法を確立した。非ウイルス的に遺伝子改変されたT細胞は、インターロイキン15を含有する無血清培地内で効率良く増幅した。増幅されたT細胞の80%以上にセントラルメモリーマーカーが発現し、全体の約40%の細胞表面にCARの発現が認められた。体外増幅されたGD2特異的CAR-T細胞は、GD2陽性腫瘍株(網膜芽細胞腫2株、神経芽腫1株、髄芽腫2株、膠芽腫1株)との混合培養において、様々な程度でGD2陽性腫瘍細胞に細胞死を誘導した。一部の細胞株では、GD2特異的CAR-T細胞に対する抵抗性が認められたが、混合培養の培地中に試薬Aを添加することによって、GD2特異的CAR-T細胞の抗腫瘍効果は飛躍的に増強した。非ウイルス遺伝子導入技術の簡便性、安全性、および経済性も考慮して、piggyBacトランスポゾン遺伝子改変GD2特異的T細胞療法は、神経原性小児がんに対する新たな治療法になる可能性が示唆された。今後、細胞製剤化を目指した前臨床試験に取り組みたい。
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