研究課題/領域番号 |
23591536
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
高橋 義行 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40432273)
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研究分担者 |
小島 勢二 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20313992)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | NK細胞 / 白血病 / 造血幹細胞移植 / HLA |
研究概要 |
One Lambda社の抗HLA抗体および白血病に発現する表面マーカーに対する抗体による4カラーフローサイトメトリー法を用い、ハプロ移植後の患者末梢血液細胞において患者とドナー間で不一致HLA発現のモニタリングを経時的に行い、キメリズム解析、微小残存腫瘍、微小再発の同定に有用であることを確認できた。 ハプロ一致移植後にHLA-LOHを生じて再発した白血病においてドナーNK細胞の傷害活性の初診時白血病と比較した変化をCr release assay法により検討し、検討した5例中3例でHLA-LOHを生じた白血病細胞がNK細胞に対する感受性が上昇していることが証明できた。 LOHを起こした患者由来白血病細胞に対するドナー由来NK細胞のキラー活性の上昇はKiller Immunoglobulin-like Receptor(KIR)に代表される抑制受容体と、同じくNK細胞上に発現する活性化受容体へ入るシグナルのバランスにより決定されると考えられる。そのためNK細胞上に発現する抑制性または活性化受容体についての持つ役割を明らかにする目的でLOHを起こす前と後で白血病細胞側にそれぞれのNK細胞受容体のリガンド(HLA, MICA/B, ULBP1-3)の発現量を同定し、変化を検討した。少なくとも患者1名でULBP2の発現がHLA-LOH後に上昇していた。 ドナー由来CD158aおよびCD158b陽性NK細胞群のうち患者血液細胞に障害活性を持つアロ反応性NK細胞を同定するため、CD107aおよび抑制性KIR受容体(CD158aおよびCD158bなど)との多重染色によるアロ反応性NK分画を同定する方法を引き続き開発中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)ハプロ移植後における血液細胞上の患者由来HLA発現モニタリングの有用性を検討:One Lambda社の抗HLA抗体および白血病に発現する表面マーカーに対する抗体による4カラーフローサイトメトリー法を用い、移植後の患者末梢血液細胞において患者とドナー間で不一致HLA発現のモニタリングを経時的に行い、キメリズム解析、微小残存腫瘍、微小再発の同定に有用であった。 2)HLA-LOHを生じた患者白血病細胞に対するドナーNK細胞の傷害活性の検討:ハプロ一致移植後にHLA-LOHを生じて再発した白血病においてドナーNK細胞の傷害活性の初診時白血病と比較した変化をCr release assay法により検討した。 3)LOH白血病細胞に障害活性を持つドナー由来NK細胞のPhenotypeの同定:LOHを起こした患者由来白血病細胞に対するドナー由来NK細胞のキラー活性の上昇はKiller Immunoglobulin-like Receptor(KIR)に代表される抑制受容体と、同じくNK細胞上に発現する活性化受容体へ入るシグナルのバランスにより決定されると考えられる。そのためNK細胞上に発現する抑制性または活性化受容体についての持つ役割を明らかにする目的でLOHを起こす前と後で白血病細胞側にそれぞれのNK細胞受容体のリガンド(HLA, MICA/B, ULBP1-3)の発現量を同定し、変化を検討した。少なくとも患者1名でULBP2の発現がHLA-LOH後に上昇していた。 4)アロ反応性NK細胞分画の同定方法の開発:ドナー由来CD158aおよびCD158b陽性NK細胞群のうち患者血液細胞に障害活性を持つアロ反応性NK細胞を同定するため、CD107aおよび抑制性KIR受容体(CD158aおよびCD158bなど)との多重染色によるアロ反応性NK分画を同定する方法を開発中である。
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今後の研究の推進方策 |
大量培養NK細胞クローンを利用した細胞療法の開発:患者由来白血病細胞に障害活性を持つドナー由来NK細胞クローンを選択的に大量培養し得られたKIRとActivating receptorの組み合わせに基づいてNK細胞を抗体と磁気ビーズを用いて選択し培養を行う。 研究協力者であるSt Jude Children’s hospitalのDr. Dario Campanaのグループが、NK細胞を効率よく大量に培養し患者へ輸注するために遺伝子改変型K562細胞を開発し(Imai et al. Blood 2005)、FDAに臨床への使用が認可されている。GMP基準に準拠したNK細胞の大量培養法を確立し患者に投与できるNK細胞製剤の作製を目指し、FDA認可改変型K562細胞を用いた手法でのNK細胞の大量培養を行う。名古屋大学遺伝子再生医療センター内のGMP基準のCell processing centerを利用する。 患者白血病傷害NK細胞クローンのin vivoでの治療効果の証明:γc鎖欠損免疫不全(SCID)マウス(NOGマウス)に患者由来白血病細胞を生着させる。定期的に骨髄細胞を採取し、骨髄中のヒト白血病細胞をフローサイトメトリー法によりCD45陽性細胞と白血病細胞表面抗原により同定し、培養NK細胞クローンをNOGマウスに輸注した後に白血病細胞数の変化およびCD56陽性細胞(ドナー由来NK細胞クローン)数の変化からin vivoでのドナー由来NK細胞の抗腫瘍効果を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
NK細胞、患者白血病細胞株、患者およびドナーLCLの培養のため細胞培養試薬(培地、抗生物質など)およびサイトカイン(SCF、IL-2,IL-15)が必要である。フローサイトメトリー関連試薬としてモノクローナル抗体、モノクローナル抗体磁気ビーズ、フローシース液が必要である。NK細胞による白血病細胞障害活性試験を行うためCr release assay用の51Crが必要である。また培養、フローサイトメトリーに使用するフラスコ、96穴プレート、チップ、FACS用チューブが必要である。免疫不全NOGマウスの購入が必要である。海外発表、資料収集、成果発表のために旅費が必要である。
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