研究課題/領域番号 |
23591537
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
嶋田 明 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (70391836)
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研究分担者 |
林 泰秀 群馬県衛生環境研究所, 研究企画係, 研究員 (30238133)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | AML / チロシンキナーゼ / 薬剤耐性 / FLT3 / 骨髄微小環境 / JAK阻害剤 / 抗メチル化薬 |
研究概要 |
小児急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia, AML)は近年5年粗生存率70%前後と、治療成績の大幅な向上がみられているが、現行の化学療法と移植の組み合わせによる治療の強化はほぼ限界に近いと考えられる。ここ数年AMLのFLT3などtyrosine kinaseを阻害する薬剤(tyrosine kinase inhibitor, TKI)の治験が進行中であるが、比較的早期に耐性化がみられるとされ、その薬剤耐性メカニズムに白血病幹細胞(leukemic stem cell, LSC)の関与が予測された。克服をめざし、1)LSCの同定法、2)LSCの薬剤耐性機構の解明、3)TKIとの組み合わせ薬の検討を行った。1)はフローサイトによるCD34+CD38-細胞、Side Population細胞(SP細胞)、aldefluor法による同定を数例でおこなったが、必ずしも同一な細胞集団を示していなかった。また細胞集団が非常に少なく、同定に困難を来した2),3)についてはTKIとPI3K/mTOR阻害剤との組み合わせがsynergisticであることを細胞株で見出しており、今後LSCでの検討を行う予定である。またこの他JAK阻害剤や抗メチル化薬などとの組合せも検討しており、SP細胞ではSTAT3/5の活性化がみられるため、JAK阻害剤との組合せは有望と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
LSCの同定はフローサイトによるCD34+CD38-細胞、Side Population細胞(SP細胞)、aldefluor法による同定を数例でおこなったが、必ずしも同一な細胞集団を示していなかった。また細胞集団が非常に少なく、同定に困難を来している。SP細胞の増幅に関しても、MSCとの共培養系に低酸素条件や、三次元培養など組み合わせているが、SP細胞の著しい増加はみられていない。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も引き続き骨髄微小環境を模したin vitroの系として、正常骨髄由来でGFP陽性、TERT遺伝子導入により不死化されたMSC細胞株(Dr Campana SJCRHより供与、Mihara K et al. Br J Haematol 2003)を用いた白血病細胞との長期共培養系を確立を目指す。この際AML幹細胞の増幅効率を上げるために、低酸素培養や3次元培養なども試みる。最初はAML細胞株で確認し、次に患者AML検体でその増殖を試みる。本方法が難しい場合は、白血病細胞によるコロニーアッセイを行い、コロニーに対してTKI, PI3K阻害剤、JAK阻害剤、抗メチル化薬などの増殖抑制効果を検討する予定である。また臨床からの情報では、例えばt(8;21)-AMLなどのように、血液学的寛解後もRUNX1-RUNX1T1などのキメラ遺伝子が消えず、分子生物学的寛解に至らない例も多くみられるが、このメカニズムは不明のままである。我々はRUNX1-RUNX1T1陽性の寛解例で、コロニー形成細胞よりPCRを行うも現在のところキメラを検出できなかった症例を経験している。実際にLSCがRUNX1-RUNX1T1を有しているのかどうかについては疑問が残るため、今年度は多数例で検討を行う予定である。またAMLと比較しうる他の疾患chronic myeloid leukemia, CML, juvenile myelomonocytic leukemia, JMML)についても同様の検討を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費はほとんど消耗品の購入に充てられ、設備備品の購入の予定はない。消耗品としては、チロシンキナーゼ阻害剤、PI3K/mTOR阻害剤、JAK阻害剤、抗メチル化薬、DNA、RNA抽出キット、PCR試薬,シークエンス用試薬、パイロシークエンス用試薬、細胞培養メディウム、フローサイト用抗体、リン酸化タンパク解析キットなどの消耗品を購入予定である。
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